玉鬘 その六十一
光源氏は、
「本当はあの当時、私が今のような気持ちなだったら、あなたをこそ、そんなふうに扱って、男を迷わすようにしてみるのだった。まったくあの時は深い心もなく、あなたを平凡な妻にしてしまったものですよ」
と笑った。紫の上が恥ずかしがって顔を赤らめている風情は、とても若々しく美しく見える。光源氏が硯を引き寄せて、手すさびに、
恋ひわたる身はそれなれど玉かづら
いかなる筋を尋ね来つらむ
と書き、
「何という因縁か」
と、そのままひとりごとをつぶやくので、紫の上は、たしかに深く愛された方の忘れ形見なのだろうと察するのだった。
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