玉鬘 その六十

 玉鬘が難点のない人柄だったので、光源氏は喜び、紫の上にも話した。



「ああいう田舎者の中で長年暮らしてきたので、どんなにみすぼらしいだろうと見くびっていたところ、かえってこちらが気恥ずかしくなるようないい娘でしたよ。こんな娘がいることを、何とかして世間に知らせて、兵部卿の宮などが、この六条の院を気に入って来られる気分をいっそう掻きたててあげたいものだ。色好みの連中が、ひどく真面目くさった顔つきでこの邸にやってくるのも、こういう気持ちをそそられるような若い姫がここにいないからですよ。この姫君を存分に大切にして世話してみたいものだ。そうして、とりすましてばかりもいられなくなる人々の様子を見比べてやろう」



 と言うので、紫の上は、



「変な親御ですこと。何よりも先に男の方の気持ちをそそるようなことをお考えになるなんて、悪いお方」



 と言うのだった。

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