玉鬘 その四十一

 右近が、




 ふたもとの杉のたちどを尋ねずは

 ふる川のべに君を見ましや




「お祈りした甲斐があって」



 と玉鬘に言った。




 初瀬川はやくのことは知らねども

 今日の逢瀬に身さえ流れぬ




 と、泣いている姿は、非の打ちどころもなかった。



「器量がこんなにすばらしくおきれいなのに、もし田舎臭くて、洗練されていらっしゃらなかったなら、どんなにか玉に瑕と悔やまれることだろう。なんとまあ、よくもこんなにすばらしくお育ちになられたことか」



 と、右近はこれまでの乳母の丹精に、心から感謝しているのだった。

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