玉鬘 その二十二
京の九条に、昔の知人で生き残っていた人を捜し訪ねて、とりあえず仮の宿りを確保した。そこは都のうちといっても、れっきとした人々の住んでいる界隈でもなく、賤しい物売り女や商人の中にまじって、憂鬱な世の中をままならぬものに思って暮らしていくうちに、いつの間にか秋になっていた。来し方や行く末のことを思うと悲しいことばかりが多かった。頼りにしていた豊後の介も、京では水鳥が陸に上がったような気持ちがして、うろうろしているだけだった。馴れない都の生活で、何のめども立たないのを所在無く思い惑うにつけても、今更、筑紫に帰るのもみっともなく、無分別に筑紫を出発してきてしまったことを後悔した。一緒についてきた家来たちも、今ではそれぞれ縁故を頼って逃げさって、もとの肥前に帰り、散り散りになった。
都に住み着くすべもないのを、乳母は明け暮れ嘆いては豊後の介にすまないと思っているのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます