玉鬘 その二十二

 京の九条に、昔の知人で生き残っていた人を捜し訪ねて、とりあえず仮の宿りを確保した。そこは都のうちといっても、れっきとした人々の住んでいる界隈でもなく、賤しい物売り女や商人の中にまじって、憂鬱な世の中をままならぬものに思って暮らしていくうちに、いつの間にか秋になっていた。来し方や行く末のことを思うと悲しいことばかりが多かった。頼りにしていた豊後の介も、京では水鳥が陸に上がったような気持ちがして、うろうろしているだけだった。馴れない都の生活で、何のめども立たないのを所在無く思い惑うにつけても、今更、筑紫に帰るのもみっともなく、無分別に筑紫を出発してきてしまったことを後悔した。一緒についてきた家来たちも、今ではそれぞれ縁故を頼って逃げさって、もとの肥前に帰り、散り散りになった。


 都に住み着くすべもないのを、乳母は明け暮れ嘆いては豊後の介にすまないと思っているのだった。

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