乙女 その七十七
九月になると、紅葉がところどころ色づいてきて、中宮の前庭は、言いようもなく風情があった。
秋風がさっと吹いている夕暮れに、硯箱の蓋に、色々の秋の草花や紅葉を取り混ぜて、中宮から紫の上に贈った。年かさの女童が、濃い紫の衵に、紫苑色の織物を重ねて、赤みがかった朽葉色の羅の汗衫をつけ、すっかり宮仕えになれた態度で、廊や渡り廊下の反橋を渡ってこちらに来る。中宮の使いといえば、格式のある折り目正しい儀式なので、相当な女房が使者に立つはずだが、器量のいい可愛らしい女童を、中宮は好んでお使いにするのだった。この女童は、中宮御所のような高貴なところに始終仕えているので、立ち振る舞いから、容姿まで、普通の女童とは違って、感じがよくて美しかった手紙には、
心から春まつ園はわが宿の
紅葉を風のつてにだに見よ
とあった。若い女房たちが、使いをほめたてる有様も面白いと見ていた。
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