乙女 その十二

 このような高貴な家柄に生まれて、もっぱらこの世の栄華にふけっていい身分なのに、窓の蛍を友とし、枝の雪に親しんで勉強したという昔の人の刻苦勉励にならった決心が、どれほど殊勝なことかということを、ある限りの故事を例にひいて、それぞれの人が思い思いに詩を作り集めた。


 その詩句は、どれも皆優れていて興深く、本場の唐土にまで持っていって、披露したいような作品であったと、当時、世間でも褒め称えられた。


 光源氏の作は言うまでもない。親らしい愛情までこめて、感動的で素晴らしかったので、人々は感涙しながら、口々に朗誦して賞賛した。女がよくわかりもしない漢詩を口にするのは、生意気だと気が引けるので、ここでは書かない。


 それから引き続いて入学の儀式をさせて、そのまま二条の東の院内に、夕霧の学問所を造らせた。学問の造詣深い先生に夕霧を預けて、本格的に学問をさせるのだった。

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