朝顔 その二十
西面の朝顔の姫宮の部屋では格子を下ろしたが、光源氏が来るのを迷惑がっているように見えるのもいかがなものかと思い、一、二枚ほどは格子をあげたままにした。
月が差し上り、薄っすらと積もっている雪が月光に映えて、春秋よりかえって風情のある夜の景色だった。
源典侍の年甲斐もない独り懸想も、世にも興ざめなもののたとえとしてひかれていたのに、と思い出し、滑稽に感じるのだった。
光源氏は、今夜はたいそう真面目な調子で、
「せめて一言でも気に入らないと自身でおっしゃってくださいましたら、それをあきらめるよすがにいたしますのに」
と、熱心にせがんだ。
「昔、お互いにまだ若くて、少しぐらいの過ちは世間から大目に見てもらえたころにも、またその上、亡き父宮が光源氏様との結婚を期待していたにも関わらず、私はそんなことはもってのほかと恥ずかしく思って、その話も立ち消えになったのに、女の盛りも過ぎ、結婚などおよそ不似合いな年頃になった今更、一声なりとも自分の声をお聞かせするのは恥ずかしくてたまらないだろう」
と思い、一向に朝顔の姫宮の気持ちは揺らがなかった。光源氏は、何というひどい人かと恨むのだった。
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