朝顔 その十
穏やかな落ち着いた手紙の文面なので、返事をさし上げないで気を揉ませるのも、情味を解さないように見られると思い、女房たちも硯を用意して勧めるので、
秋果てて霧の籬にむすぼほれ
あるかなきかにうつる朝顔
「いかにも私の身にふさわしい花をたとえてくださいました。それにつけても涙の露に濡れております」
とだけ書いてあった。取り立てて気の利いたところがあるわけでもないのに、なぜか手放しがたくて、光源氏はその手紙を、いつまでも眺めていた。
大体こういう歌の贈答は、その人の身分や筆跡などに、欠点が取り繕われて、そのときは欠点がないように見えても、それをもっともらしく書き伝えようとすると、おかしいなと思うような点もあるようなので、差し出がましく取り繕って書き直したりするうちに、どうもいい加減なところも多くなっていることだろう。
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