朝顔 その四

 こうして面と向かって、ことさらほめるのはどういうものかと、光源氏はおかしく感じた。



「田舎者に成り下がりまして、すっかり気落ちしてしまったあの数年以来、私はもう見る影もなくやつれてしまっておりますのに。帝の容姿は、昔の世にも肩を並べる人はとてもあるまいと思われるほど、世にも稀なお美しさでいらっしゃいます。ただいまのお言葉はとんでもないご推察でございます」



 と言った。女五の宮は、



「時々お目にかかれたなら、余命幾ばくもない私の寿命はもっと延びることでしょう。今日はあなたさまにお目にかかれて老いも忘れ、幸いこの世の悲しみもすっかり消えた思いがします」



 と言っては、また泣くのだった。



「姉君の大宮は羨ましい。あなたさまを婿になさってご縁を結ばれ、お孫にも恵まれて、親しくお逢いしていらっしゃるのを羨ましく思っています。こちらの亡くなられた式部卿の宮も、私と同じように大宮を羨んで、あなたさまを婿にお迎えできなかったことを、時々悔やんでいられました」



 と言うその話には、光源氏も多少耳に止めるのだった。

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