朝顔
朝顔 その一
斎院の朝顔の姫宮は、亡き父君、式部卿の宮の服喪のために、斎院の職を下がった。
光源氏は例によって、一度思いをかけた恋は決して忘れないという心癖から、喪中のお見舞いにことよせて便りをしげしげと送った。朝顔の姫宮は、以前二人の噂で迷惑したとことを思い出し、返事も心を許してさし上げることはなかった。
光源氏はそれをとても残念に思っている。
九月になって、式部卿の宮の旧邸、桃園の邸に朝顔の姫宮が移ったと聞き、叔母君の女五の宮がもとから住んでいるので、そのお見舞いにかこつけて訪ねた。亡き桐壺院が、この妹の女宮たちを、とりわけ大切に思っていたので、光源氏は今でも、その叔母君たちと親しくし、引き続いて親密な付き合いをしているようだった。
朝顔の姫宮は女五の宮と、同じ寝殿の西と東に分かれて住んでいた。式部卿の宮が亡くなってから、それほど日数も経っていないのに、邸は早くも荒れた感じがして、もの淋しい気配がしんみりと漂っていた。
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