薄雲 その十五

 まだ何もわからないので、無邪気にはしゃいでいる姫君を、紫の上は可愛く思うので、あの大堰にいる明石の君への妬ましさも、すっかり許してあげた。



「あちらではどんなに姫君のことを恋しがり案じていることだろう。私だって会えなくなったらどんなに恋しく思うかしれない、こんなにも可愛らしい姫君を」



 としげしげと姫君の顔を見つけながら懐に抱き上げて、可愛らしい乳首をふくませたりして、乳もでないのにたわむれている様子は、本当に美しくて惚れ惚れする。側に仕えている女房たちは、



「どうしてかしらね、同じことなら」


「こちらにお生まれになれば」


「ほんとうにもう、そうですとも」



 など話し合っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る