薄雲 その五

 思慮深い人に判断してもらっても、また、陰陽師に占わせてみても、どちらも、



「やはりあちらへいらっしゃったほうが、姫君の運勢がよくなるでしょう」



 というばかりなので、明石の君もすっかり心がくじけてきた。


 光源氏も姫君を引き取ろうとは決めているものの、明石の君がどんなに悲しいだろうと同情して、無理にもとは言いかねて、ただ、



「姫君の袴着のことは、どうするつもりですか」



 と手紙を送った。



「何事につきましても不甲斐ない私の手許に姫君を引き止めては、仰せの通り、姫君の将来も可哀そうに思われます。けれどもまた、そちらの方々のなかへご一緒させていただきましても、どんなにもの笑いになりますことやら」



 と返事をしたのを光源氏は見て、いよいよかわいそうに思った。


 姫君を引き取る日取りなどを占わせたり、ひそかにその日のための万端の支度などを命じる。


 明石の君は、姫君を手放すことは、やはりとても悲しいが、



「姫君のためになることを何よりも考えなくては」



 と耐えている。

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