松風 その十六

 明石の君のこの上なく美しく成熟した器量や姿の素晴らしさを見て、光源氏はとても見捨てておけなかった。姫君は姫君で、いつまで見ていても、可愛くて目を離せない。



「どうしたものだろう。ここでこのまま日陰の子として育てるのも可哀そうだし残念なので、二条の院に連れて行って紫の上のもとで思いのままに大切に育てたら、将来、人からあれこれ非難されることもないだろう」



 と考える。けれどもそうした場合、明石の君がどんなに悲しむかと思うと痛々しくて、とても言い出すことができず、涙ぐんで姫君を見ていた。


 姫君は幼心に少し恥ずかしそうに人見知りしていたが、次第に打ち解けてきて、お喋りしたり笑ったりして、まとわりついてくるのを見ると、ますます顔のつやつやした美しさが増して、可愛らしくてならない。光源氏が姫君を抱いている様子は、見るだけでありがたく、これから姫君の幸運はこの上もないと思われた。


 次の日には京へ帰る予定だったので、少しゆっくり二人で寝過ごした。すぐにここからまっすぐ帰るはずだったが、桂の院に迎えの人々が大勢集まっていて、大堰にも殿上人がたくさん迎えに来た。

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