絵合 その六
朱雀院は、あの櫛の箱の返事を見るにつけても、前斎宮のことを忘れにくいのだった。その頃、光源氏が朱雀院の御所に参上したので、朱雀院は光源氏としんみりと語り合った。そのついでに、前斎宮の伊勢下向の折のことを、前にも口にしたことを、今日も繰り返した。それでも前斎宮への恋しい気持ちを抱いたことなどは、とてもあからさまに打ち明けなかった。
光源氏も、朱雀院の内々のそうした気持ちを知っていたような素振りは見せず、ただ、今はどのような気持ちなのか、それが知りたくて、あれこれと前斎宮のことを話題にすると、今でも並々でなく深く思いをかけていることが察し、今更のように気の毒になった。朱雀院が申し分なく素晴らしいと深く心に刻んだ前斎宮の器量は、一体どんなに美しいのだろうかと、見たく思うが、とても拝見することはできないので、見ることができた朱雀院を妬ましく思っている。
前斎宮はとても重々しい人柄で、少しでも子供じみた振る舞いなどがあると、自然と姿を見ることができる折もあるだろうが、ますます奥ゆかしい態度が増すばかりなので、そうした様子を見るにつけても、光源氏は本当に申し分ない人だと思うのだった。
こんなふうに帝のそばには、二人の女御が仕えているので、他の人の割り込む隙もなかった。兵部卿の宮は、姫君の入内をそう易々とは思い立てない。それでも帝が成人したのなら、まさか見捨てないだろうと、その時節の到来を待っているのだった。
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