蓬生 その二十四

 加茂の祭や斎院の御禊などがある季節なので、その支度にということで、人々から献上された進物が、色々とたくさんあるのを、光源氏は当然そうするべき人々に全て配った。そうした中でも、末摘花の邸には、特に細々と気遣って、腹心の家来たちに命じ、その他に下男たちを宮廷に差し向けて蓬を払わせ、外堀が見苦しいので、板垣を打ちつけてしっかり修繕した。それでも光源氏がこうして末摘花を探し出したなど、あれこれ噂が立っては不面目なので、出かけることはなかった。ただ手紙だけを細々と書く。二条の院のすぐ近くに邸を造っているので、



「やがてそちらにお移しもうしあげるつもりです。適当な女童などを探して、お使いになるのがよいでしょう」



 などと、召使たちのことまで配慮しながら世話をするので、こんなみすぼらしい蓬の宿では身に余るほどの有り難さに、女房たちも空を仰いで、光源氏の邸の方向に向かって礼拝するのだった。


 光源氏はかりそめの戯れの恋にしても、平凡な普通の女には興味を示さず、世間からこれなら少しはと注目され、印象に残るようなところのある女を捜し求めて近づいているとばかり、人々は思っていたのに、これはまた全く正反対に、何につけても人並みでさえない末摘花をひとかどの人のように扱うのは、いったいどういうつもりだったのだろう。これも前世からの因縁というものかもしれない。

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