蓬生 その六

 侍従とかいった乳母の娘だけが、長年暇をもらおうともせず仕えていたが、こちらと掛け持ちで通って仕えていた斎院が亡くなったので、暮らしも立ちかねてとても心細がっていた。その頃、末摘花の母君の姉妹で、今は受領の妻に落ちぶれた人がいた。その人が娘たちを大切に育てていて、みめよい若い女房を幾人か探していた。


 侍従は、全く知らないところよりは、昔親たちも出入りしていたこともあったのだからと思い、そこにも時々顔を出していた。


 この末摘花の姫君は、前にも言ったように人見知りの強い性質なので、この叔母とも親しく付き合わなかった。叔母君は、



「亡き姉君は、この私を見下して、家の恥じだと思っていたから、末摘花の今の暮らしは気の毒だけれども、私からはお見舞いは申し上げられません」



 などと、小憎らしいことをあれこれ侍従に言い聞かせながらも、時々は末摘花に便りを送っていた。


 もともとの生まれつきから、そうした受領のような並の身分のものは、かえって上流のほうの真似をしようと心がけて、とにかく上品ぶるものも多いが、この人は高貴の血筋なのに、受領の妻にまで落ちぶれる宿縁があったのだろうか、どこか心に賤しい面のある叔母君なのだった。

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