蓬生 その六
侍従とかいった乳母の娘だけが、長年暇をもらおうともせず仕えていたが、こちらと掛け持ちで通って仕えていた斎院が亡くなったので、暮らしも立ちかねてとても心細がっていた。その頃、末摘花の母君の姉妹で、今は受領の妻に落ちぶれた人がいた。その人が娘たちを大切に育てていて、みめよい若い女房を幾人か探していた。
侍従は、全く知らないところよりは、昔親たちも出入りしていたこともあったのだからと思い、そこにも時々顔を出していた。
この末摘花の姫君は、前にも言ったように人見知りの強い性質なので、この叔母とも親しく付き合わなかった。叔母君は、
「亡き姉君は、この私を見下して、家の恥じだと思っていたから、末摘花の今の暮らしは気の毒だけれども、私からはお見舞いは申し上げられません」
などと、小憎らしいことをあれこれ侍従に言い聞かせながらも、時々は末摘花に便りを送っていた。
もともとの生まれつきから、そうした受領のような並の身分のものは、かえって上流のほうの真似をしようと心がけて、とにかく上品ぶるものも多いが、この人は高貴の血筋なのに、受領の妻にまで落ちぶれる宿縁があったのだろうか、どこか心に賤しい面のある叔母君なのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます