蓬生 その二
光源氏の庇護の名残りで、しばらくの間は末摘花の姫君も、泣く泣くどうにか過ごしていたものの、年月が経つにつれて、いよいよいたわしく不如意な暮らし向きになるばかりだった。
昔から仕えている古女房などは、
「本当にまあ、末摘花様は何と運のつたない人なのでしょう。思いかけずまるで神仏が突然出現したような光源氏様の情けを頂戴して、人はこんな素晴らしいご縁にもめぐり合うことがあるのかと、私たちは光源氏様を本当に有り難く思っていましたのに、移り変わるのは世の習いとは言うものの、他に頼る人もいない今の身の上は、何とまあ悲しいことでしょう」
と、愚痴をこぼして嘆くのだった。
そうした不如意な暮らしが当たり前だった頃の昔は、嘆いても仕方がない貧しさにも逸れなりに慣れてしまっていたのに、なまじ光源氏のおかげで、多少なりとも世間並みの暮らしに馴染んだ月日があったため、女房たちは一層辛抱できない思いに嘆いているのだろう。
前には、多少とも役に立ちそうな女房たちが、自分からこの邸に参上しては住み着いていたのに、今はみな、次から次へと、ほうぼうに散ってしまった。中には年をとって死ぬものもあり、歳月と共に、身分の上下なしに人少なになっていった。
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