花宴 その七
左大臣家では例によって葵の上がすぐに逢おうとはしない。
光源氏は所在無さに、あれこれと考えながら琴を弾き、
〈やはらかに寝る夜はなくて
親さくる夫〉
と催馬楽の一節を謡う。そこに左大臣が入ってきて、先日の花の宴に感動したことを話す。
「私はこのような老齢となりまして、天皇の世も四代見てきましたが、この度のように、詩文の出来栄えが秀れていて、舞も音楽も、管弦の調子も全て整っており、命が延びるような気がしたことはございませんでした。今はそれぞれの道に秀れた名人たちが大勢そろっているご時勢の上に、あなた様がそれぞれの道に詳しくて、しっかりと指示したからでしょう。この年寄りまでもが、つい、もう少しで舞いだしそうな心持がしました」
と言ったので、光源氏は、
「特に私の指示でしたということはありません。ただ役目として、その道の名人たちをあちこち探してみただけのことです。宴の中では何よりも、頭の中将の舞は、実に後代の手本になるだろうと拝見していました。まして左大臣御自身が、栄え行く時代の春を祝われて、あの場で舞ましたら、それこそ聖代の面目でしたでしょう」
と言った。
左大臣の子息の左中弁と頭の中将たちも来合わせて、高欄に背をもたせて、それぞれの楽器の調子を整えて合奏した。それはたいそう趣き深いことだった。
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