第70話 ネズミ鳴くとき

「あれからもう何ヶ月経つんだろうな、俺もわかんなくなって来ちまったよ」

 男はしゃべる。

「お前と何ヶ月もいたのにお前の好物一つも知らねぇ、だから思い出の味を持ってきてやったぞ、俺のだがな」

男は石碑の前にラーメンと共に座り込み話をしていた、まるで誰かがそこにいるかのように、まるでその誰かに話し掛けるように…


「またくるよ、今度はあいつらと一緒に」


男は立ち去るラーメンだけを置いて。



あの爆発から数カ月経った、ロボットの爆発は想像絶するものであり町は一瞬で焦土と化した。

その地はコンクリートで埋め立てられ石碑が一つ建てられた、二度とこの地をこの血では汚させないと書かれた石碑が一つ。

それを建てたのがドロジョーニン総統である。

世界はドロジョーニンの総統を崇拝する立場にあった。



「紹介しましょう、世界を救った英雄です」

 しかしそこには誰も登場しなかった、代わりに巨大なモニターが一つ降りてくる。

「共に歩もう、愛するものよ」

 映されたのは包帯で顔や体をぐるぐる巻きにされた男が一人横たわっていた。この男こそあのドロジョーニン総統である。

あのテロ事件は戦田ヶ原チュウ率いる者たちの仕業となり、逆に総統は世界を救った英雄となっていた。彼はあのウイルスのワクチンも自ら制作しそれを全世界に配布したのだ、盛大なる自作自演である。しかし世界は騙された、この非情なる男に。

 パチパチパチと拍手と歓声が鳴る、総統の国民栄誉賞表彰式に彼は登場せず、かわりに今の映像が流された。

それは怪我を隠すために見せた顔を晒さないためである、なぜなら彼はあの時もチュウさんらのすぐそばにいた人物なのだから・・・



「おじさん、あの有名な人でしょ」

「有名?かもしれないな」

「ちょっと目塩?なにして・・・あなたは!」

 二人の姉弟は頭にエビフライを乗せた男を家へと招きいれた。

「あなた、あれですよねテロリストのエビフライ、さん」

「そうだ」

「否定しないんですね、私が警察に連絡するかもしれないのに」

「そうだな、その時はまた逃げるがな」

「また?」

 エビフライさんは近くに落ちていた教科書を手に取る。

「人類を滅亡させようとしたテロリストか、でかく出たもんだ、こんなんで有名になるとはな」

「それ本当なのおじさん」

「逆だよ」

「逆?」

「俺たちは世界を救おうとしたんだ」

 エビフライさんはあの日のことを二人に話だした。



あの日、チュウが退避していろと言ってから数分後強大な爆発が起きた。

ビルを破壊し、何もかもがあの日消えた。

俺たちは離れていたおかげで直撃は避けられた、他の仲間も手足がなくなるとか記憶が飛ぶとかはなかったが離れ離れになってしまった。

俺はずっと奴らに追われつづけ、逃げて続けそしてお前らの家の庭に逃げ込んだという訳さ。

「・・・・」

「信じられるか、あいつは世界を救うために戦って殺されたんだ、さすがのあいつも爆発の直撃を受けたら一たまりもないだろう」

「他の人達は?」

「今もわからん、しかし最近妙な噂を聞いてなあの男、皆には総統と名乗っているらしいな」

「はい、おそらくまたテレビで」

 弟がテレビをつける

『みなさん、人類は再び滅亡します、私を信じ私とあるものだけが救われます』

「こいつは、速く残りの奴らを見つけなくては」

「おじさん手伝おうか?あの悪い奴をやっつけるんでしょ?」

「君は彼を悪者だと思うのかい?さっきの話抜きにしても」

「うん、おじさんみたいな面白い人が悪い人のわけがないもん」

「面白い、か・・・」

 そういうとエビフライさんは立ち上がった。

「それじゃあリアカーを用意してくれ合いに行きたい人がいる」


「いらっしゃい?子供が二人?」

「違う俺だ」

「エビフライさん!」

リアカーを引く姉妹、そのリアカーの中身はエビフライさんそして、

 目の前にいたのはナナシ、筆夜、ヨメイドの三人だった

「何カ月か前に見かけてな、ここに入っていくのをみたんだ」

「じゃあなんで来てくれなかったの!」

「あの時は追われていたんだ、こう見えても指名手配犯だからな」

「それは私たちも同じですよ」

「えっ、そうです」

 三人は喫茶店を営んでいた、名前は「戦田ヶ原」

「まずいんじゃないか?」

「大丈夫、読み方は”せんだがはら”だから」

「かってにしろ、他の連中、バカやノッポさんは?」

 三人は顔を見合わせる。

「ノッポさんは亡くなりました」

「なに!」 

 衝撃的だった

「あのあと爆心地に行ったら彼の服を着た遺体があったんです」

「そうだったのか、バカは?」

「え、バカはカジキマグロさんの家に住んでいましたが一か月ほど前に家でしまして行方の方は・・・」

「そうか、竹すぎやバカロボは?」

「バカロボもおそらくノッポさんと共にいたのでダメかと、竹すぎさんらは今宇宙に逃亡中です」

「そうか」

 エビフライさんは出されたアイスコーヒーを飲む

「あの出すものすべてがまずいお前がこんなマトモでうまいものを出せるようになるとは、それだけ時間をつかっちまったということか」

「そうですね」

「それじゃあ失った時間を取り戻すぞ、逆襲開始だ」

 その合図でリアカーの中にあったものを出す。

     ”この名の元に集まろう 戦 田 ヶ 原”

「これは」

「一万枚コピーした、このポスターを町中に張り味方と敵、両方を呼び寄せる」

「確かにこんなのを今貼ったらそいつを始末するために来ますね」

「そしておそらくバカも」




「あの大丈夫ですか?」

 男は砂浜に倒れていた。

「ここは?」

「あの、なんで全裸なんですか?」

 男は全裸だった。

                              つづく

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