第67話 チュウサンタの巻

12月、クリスマスイブの前日。

「という訳で私がサンタです」

「は?」

 実は数時間前

「では町内会議最後の議題は今年のサンタです」

「なんだそりゃ」

「チュウさんは毎年会議に参加していないから知らないんですよ」

 今年はナナシとバカに言われ渋々来たのだ。

「毎年この町内の子供たちにプレゼントを配るサンタ係というのがあるんですよ、そうだ今年はチュウさんに」

「嫌だ!!」

「あなたこの町でいくらつけがどれだけあると思ってるんですか、倍にしますよ」

「痛いところを」

「じゃあこの白袋に入ってますんで」

「今の時代こんなの持ってると職質されるぞ」

 という訳で、

「私がサンタです、じゃあ行ってくる」

「トナカイとそりはないのか?」

「じゃまなだけだ」

「チュウさんちょっとまって」

「なんだ?」

 ナナシに引き留められると白い布をかけられる。

「忍法早着替え」

 布をとるとそこには真っ赤な格好のチュウサンタがいた。

「こいつは目立つなぁ」

「これで全世界のサンタさんは頑張っているんだから」

「まぁそれもそうか?」

 いまいち納得がいかなかったがこのままだと夜が明けてしまいそうだったので出かけることにした。今は9時。

「子供がいる家の住所リストを貰ったが個人情報保護とやらはどこに行ったんだ、大丈夫なのかうちの町内は?」

 などとぶつくさつぶやいているうちに家についた。

「そういえばプレゼントってなんだアンケートでもとったのかな?」

 そういって袋をのぞき込むとそこにはガラクタともいえる品々が袋に放りこまれていた。

「こいつはひでぇ福袋だ、福なんてありゃしねぇな、なんて言ってないでとっと終わらせよう、、この子にはこれにするか」

 チュウが選んだのは一個前の戦隊もののプラコップであった。

「まだ合体ロボのほうがいいけど、バラバラで合体できないのも悲惨だしな」

 とここで気が付いたのがどうやって家に入るかである。

「まぁ煙突もないしチャイム押して入るか、話もついてんだろ」

 ピンポーン

「はーい、ってなんですか」

「なんですかって、サンタですよ」

「サンタを装った強盗、その袋の中身はなに!!いやー」

「話ついてねーじゃねぇか!」

「どうするか、窓ガラスを割って入ってそのあと接着するか?いやここはもう奥義を使わず普通に行こう」

 そういうとチュウは家の二階に這い登り子供部屋を見つけた。

「ここか」

 そしてその窓をノックした。

「はーい、!!」

「どうも~サンタだよ」

 子供は驚く、そりゃ二階の窓外に人がいるのだから、そして窓を開けてくれた。

「ありがとm、はいプレゼント、ママや友達には内緒だよ、じゃ」

 そういいこの場を後にした。

「な、なに?サンタさん?」

「今思ったが年を重ねるごとにまずいんじゃないか?開けずに親を呼ばれる可能性があるな、よし」

 次のチュウさんの作戦は実にシンプルであった。まず先ほどと同じく子供部屋の窓をたたく、そして子供がでてきて親を呼ぼうとした瞬間。

がシャーン

窓を蹴破り、子供の口と手を固め押さえつける。

「しゃべるな、プレゼントだ、親に言ったらどうなるかわかるな」

(なんで窓ガラスが割れたのに音がならないの!)

 それはチュウが奥義で音を消したからである。(結局使った)

「じゃあないい夢みろよ」

 そして奥義で復元し去っていくのだあった。

「な、なんだったんだ?というかプレゼントってスーファミのカセット?」

「さて又問題だ」

 次の問題は子供部屋がないアパートであった。

「今後も出てくるだろうし速く解決しないとな」

 そして導き出した答えが

「全員手をあげろ」

 サンタがただの強盗となり果てた姿であった。ドアを蹴破り袋を振り回し、プレゼントを置いて去る、これがチュウサンタであった。

「この調子でどんどんいくぞー」

 この町は子供の数はあまり多くなく、むしろ少ないくらいなのでわりかしスムーズに事は進んでいった。そして11時を過ぎ、次の日になり・・・

「もう3時か、あと一軒ってプレゼントがない!!」

 袋そのものとなり渡すものがなくなってしまったのだ!

「いやまずいぞこいつわ流石に一軒だけプレゼントがないのはおかしい、でも店は開いてないし、というかこんな服装の男になんか打ってくれるのか?うーむ」

 顎をさすり考えるが手がない。

「よし最終手段だ!」

 恒例の窓たたきからスタート。

「誰?サン、タさん?」

 それは女の子であった。

「そうです、私がサンタです、プレゼントをあげるからいいなさい」

(自分流神拳で物をだそう、一時的であるが形にはある、であとで本物と取り換えればいい)

「それじゃあ・・・」

「あっママパパとかは困っちゃうな~物がいいな~」

 顔が急に暗くなる少女

「えっ、まじでそういう系だったの」

「いえ、もういないんじゃなくてお仕事で家にいなくて、その、クリスマスを一緒に過ごしたいんです!!」

「・・・・・。いい子だ」

「えっ?」

「いいや、待ってろ!!」

 チュウはベランダにでるとそこから飛び降り飛んだ。

「えっ、サンタさんて飛べるんだ」

「た、ただいま」

「もう25日ですよ、それも22時の」

「ちょっとな、人の代わりにお仕事してきた」

「仕事ってサンタのか?」

「ヒーローの」

「はっ?」

 こうしてチュウさんのクリスマスは始まったのでした。

                              つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る