なんだ神様ってなんだ
なんだ神様ってなんだ。
神を舐めるにも程がある、と神は愛しい成子を見下ろし、思っていた。
御簾に住まう悪しきものが出てくる前に、神の力で御簾を巻き上げたものの、留め具で留めるのは間に合わなかったので、手で押さえてみたのだが。
……成子に力及ばなかったこと、気づかれただろうか、と神は窺い見る。
すると、なにやら成子は小首を傾げていた。
可愛らしい仕草だが、なにもかも見透かされていそうな嫌な予感がする。
そのとき、床下から悪霊の声がした。
「なんとっ。
御簾から悪しきものがっ。
これは呪いの御簾だったのかっ」
いや……悪しきものはお前だ。
そして、悪霊が呪いに怯えるな、と神は思っていた。
普段の言動を見ていても思うのだが。
どうやら、いまいち、肝の据わっていない悪霊のようだ。
そのとき、成子が
「神様、何故、しばらくおいでにならなかったのですか?」
「……ちょっと所用があったのだ」
すると、成子は、神様の所用ってなんだ、という顔をする。
だが、言った自分も、神様の所用ってなんだ、と思っていた。
成子の視線がまずい方向にウロウロしないよう、神は成子に視線を合わせたまま、そっと留め具で御簾を留め、手を離した。
成子は思っていた。
この神様、留め具で留めるのが間に合わなかったようだ、と。
いつもなら、御簾が勝手に巻き上がると留め具も自然にはまっていたのに。
失礼だが、いつもこの御簾を巻き上げてくれていたナニカの方が神様より力が上ということか。
そんな風に思いながら、成子は神と悪霊に向かい言った。
「この御簾、いつの間にか、以前の御簾とは変わっていたようですね。
同じ文様の入った御簾なので気づきませんでしたが。
少し色が違うようです。
新しく同じものを作らせたか、何処かにしまってあったものなのかも。
この中央の御簾以外はみな、わずかに日焼けして色が薄くなっていますから」
「そのようだな」
と神は御簾を見上げて言ってくる。
「すると、鬼だか悪霊だかの入った御簾を此処にかけた者が居るということか」
と悪霊が言った。
「成子。
誰かお前に恨みのある奴の仕業だろうかな。
……さては真鍋か?」
そう言い、悪霊は、にやりと笑う。
何故、真鍋……と思う成子に悪霊は、
「いつまでもお前が手に入らぬから、愛が恨みに変わったのかもしれないだろう?」
と呟くように言ってきた。
いや、真鍋にそこまで愛されている感じはまるでしないんだが、と思いながら、成子はそんな
どうもなにか隠しているようだな、と思ったからだ。
「神様……」
と呼びかけると、神様はビクつく。
いや、神様がビクつくな、と思いながら、成子は、チラ、と巻き上がっている御簾を見た。
すると、神様もチラ、と窺うように御簾を見る。
なにか怪しい……。
いや、なにもかもが怪しい。
まあ、とりあえず、御簾に留め具を留められなかったことを知られたくないことは確かなようなんだが……、と成子は思っていた。
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