第339話歎異抄 一文不通にし て、経釈の往く路もしらざらんひとの

(原文)

一文不通にし て、経釈の往く路もしらざらんひとの、となへやすからんための名 号におはしますゆゑに、易行といふ。

学問をむねとするは聖道門な り、難行となずく。

あやまつて学問して名聞・利養のおもひに住す るひと、順次の往生、いかがあらんずらんといふ証文も候ふべきや。

(意訳)

全く読み書きができず、経典や注釈書の論理などは理解ができない人のために、唱えやすく考え出されたのが、名号というものであり、易行(簡単で実践しやすい行)というのです。

これに対して、学問を旨とする行は、聖道門であり、実践が難しいので、難行と言います。

そういう学問をして、考え違いをして、名声や利益を得ることに執着する人は、生まれ変わって浄土に行くことが難しくなるという、確かな証文もあるのです。


「自らの名声や利益」を求めて、仏教の厳しい修行を行う。

執着ら離れて自由な世界を求めるのではなく、「他者への優越と財貨」のために、難行をする。

「他者への優越」の過程で、無学な念仏者を「いじめる」こともあっただろうし、「財貨獲得」のために、法外な布施を要求することもあったのかもしれない。


こういう学問僧は、ますます、仏の清浄な世界から、自ら遠のいていく。

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