第21話 104号
「体温低下。液圧がどんどん下がっています」
「よし、循環促進オイルを点滴で投与しなさい」
医院長の指示が飛ぶ。
「投与しましたが、これでは体内の毛細管が、圧力に絶えられません」
「身体の一部を切開し、そこから体液を取り除きなさい」
看護士達は、良く医院長の手となり足となって動き回る。
「医院長、これでは患者の体力が持ちません」
「最後まで、あきらめてはいかん」
「ピーーーーッ・・・」
「医院長、心肺機能および循環器機能が停止しました」
「細胞蘇生オイル二百ミリリットル投与。電圧電気ショックを二回与えたまえ。その後循環器マッサージ。心肺気エアー補充。これを繰り返しなさい」
手術室では、医師団による、懸命の蘇生手術が施されていた。
「医院長、全ての機能が停止しました」
「サブモーター始動」
「サブモーターは、すでに停止しています・・・」
「やむを得ん、家族の方達に手術室に集まるように言いなさい」
看護士は、悲痛な面持ちで手術室をあとにする。
患者の家族は手を握りしめながら、口々にこう叫んだ。
「104号、死んだなんて嘘でしょう」
「ねえ、目を開けてよ104号 104号!」
「まことに残念ですが、午後四時十三分、子育てアンドロイド104号は耐久年数に達し、すべての機能が停止いたしました」
医院長はそう言うと、患者の脳から取り出したICチップを、家族に手渡した。
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