今更3章のネタをぶちかますと影を踏んで動きを封じるのは女武者や死霊術師が使ってたような影系の死霊魔術の系譜(ミイラまた出てきたので…)
巨大な魔法が膨れ上がり、すべてを飲み込み、そして急速に消え去った。すべてを巻き込んで。
からん……
槍が、持ち主の手より転がり落ちた。かと思えば、それは急速に風化し、そして崩れていく。
女人馬たちを呑み込んだ魔法の成した結果であった。
「……え?」
それだけではない。
女人馬が倒れた。全身が痙攣する。頭蓋が陥没し、全身から血を噴き出した。そして、最も顕著な変化。
彼女の下半身の衣が、裂けた。内側から膨れ上がった肉体によって引き裂かれたのだ。たちまちのうちに変化したそれは、破壊された馬のように見えた。
それらの様子を、吟遊詩人は呆然と見ていた。敵の魔法によるもの?いや、違う。
魔法が解けているのだ。吟遊詩人とそして、女人馬。二人を呑み込んで膨れ上がった
後に残ったのは、瀕死の
「…ぁ……かはっ……」
恐らく、脅威となりうる魔法の武器を排除するために発動させたのであろう。されど、それは、魔法で生命を保っていた女人馬にとって致命的に過ぎた。
「ふむ。どうやってあの場を生き延びたのか疑問であったが、なるほど。傷を消すために人の姿を取っておったか」
地下に潜るためではなく、と付け加えると、女人馬の生命を奪いつつある魔法使いは、フードに手を伸ばす。
異相であった。
目は落ちくぼみ、頭蓋骨に張り付いた皮膚はカサカサに乾燥している。唇はめくれ上がり、黄ばんだ歯が覗いている。頭髪はほとんど抜け落ちており、残ったものも固く、手入れされていないのは明らかだ。
死者の貌であった。
限りある命であればたどり着けぬ域へと行くために、自らの死に呪いをかけ偽りの生命を生き続ける、不滅の怪物。
その頭蓋に収まる英知はまさしく人智を越えたものだが、それを欲したとしても彼らとの対話は成立しえない。何故ならば、永劫の命を得るという事は人であることを捨て去るのと同義だからだ。永き時間は魂を歪め、いつしか狂わせる。一見言葉が通じたように見えても、その根本は既に人ならざる行動原理に突き動かされているのである。
死者と言葉を交わすことはできない。
敵の魔法使いとしての格は、自分たちを遥かに上回っていることを、吟遊詩人は悟った。
彼女の馬頭琴も既にない。敵の魔法によって崩れ去った。あれも高度な死霊魔術の産物だからである。残るは自身の魔力と身につけた武のわざのみだが、不死の敵勢に通じるとは思えなかった。
「さあ。そやつも殺せ」
にじり寄る死者の軍勢に、吟遊詩人は後ずさった。
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