オアシスでモンスターと言うとまずこいつらが思い浮かぶ件(たぶんファイナルな幻想の四のせい)
「ひぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
夜の静寂を切り裂く悲鳴に、女賢者は飛び起きた。剣を手に取り、外へと飛び出す。
家々も騒がしい。村の門、泉の側のそれが開くのを待っている暇はない。人間離れした跳躍力を生かし、狭い街路を挟む壁面で三角飛びを繰り返す。たちまちのうちに民家の屋上まで登った彼女は、そのまま一気に外へと飛び降りた。
耕作地を抜ける。夜風は冷たいが、女賢者はそれを苦痛と感じぬ。むしろ自身の肉体の方がなお冷たいであろう。風のごとき速さで林に入ったその先。
そこでは、頭部を血塗れにした若者が倒れていた。素早く介抱する。大丈夫。まだ息はある。
女賢者は、その場で応急処置を始めた。
◇
夜の村は騒然となっていた。見回りの若者が襲撃されたのである。当然であろう。
下手人は、泉より現れたと思われる。足跡が残っていたのだ。
松明片手に集まった村の男たちは油断なく水辺を警戒している。
「礼を言う。うちの者の手当てをしてくれてな」
壮年の男が頭を下げた。頷き返す女賢者。
あの若者は幸い息があった。医術の心得もあった女賢者は、村へ運び込んだ彼に治療を施したのである。傷跡は残るし、ひょっとすれば後遺症も出るかもしれないがあの若者は助かるだろう。神々の加護があればもっとよかったが、この村には神殿はなく、水神の小さな祠があるだけである。治療がなければ彼は、巡回の神官を待つ暇もなく生命を落としていたに違いない。
それよりも問題なのは、もう一人の若者。二人一組で見回りをしていたはずだが、もう一人の姿がないのだ。水中に引き込まれたような痕跡が見受けられた。もう生きていないとしても、遺体を奪回しその霊を弔わねばならぬ。
「助けにいく。疲れていると思うが、手を貸してもらえまいか」
男の頼みに、女賢者は再び頷いた。
◇
ぽちゃり
頬にかかった水滴の感覚で、若者は目を覚ました。
暗い。まだ夜なのだろうか。口まわりや体がちくちくする。リズミカルな振動がどこか不愉快だった。
───眠い。なんだかだるい。ああ、でも起きないと、母さんにどやされる。仕事が……
そこで、目がはっきり覚めた。ここはどこだ!?
周囲を確認しようとする若者だったが、体が動かない。声も出せぬ。周囲は暗い。何も見えぬ!!
暴れ出した彼。されど身動きはまったくとれなかった。なぜならば若者の体は荒縄で縛られ、口にはしっかりと猿轡がかまされていたから。
若者は、己が荷物のように担がれていることを悟った。移動しつつあるのだ。彼を担ぐ相手は、暴れてずれた若者を抱え直す。
その拍子に見えた。天井にあいた穴。
───上流からやってきたんだ!
それしか考えられなかった。
最悪だった。魚を捕まえに行って魚に捕まるとは!
そんな内心を知ってか知らずか、
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