ちなみにこの凸凹コンビ、昔書いた短編の登場人物だったりします(ギャグ作品な)

―――SHHHHAAAAAAAAGOOOOOOAAAAAAAA!


地響きを立てて突っ込んで来るのは凶悪な面構えの巨体。

鱗に覆われた暴君竜ティラノサウルスの巨体は、地形そのものが動いているのに等しい。

巨岩の落石に匹敵する運動エネルギー。味方のはずの小鬼ゴブリンどもすら跳ね飛ばし、突進してくる敵の巨体を見上げても、完全武装の岩妖精ドワーフは逃げなかった。どころか彼は笑みを浮かべると手斧を構えなおしたのである。

巨獣のあぎとが迫る。その瞬間、岩妖精ドワーフは踏み込んだ。

敵の嚙みつきを盾でいなし、喉元まで潜り込んだ彼。その右手の手斧が閃く。

凄まじい切れ味が、怪物の喉を断ち切った。


―――GGGGYYYYYYYAAAAAAAAAAAAA……


どう。

地響きを立て、巨体が崩れ落ちる。10メートルの怪物が、ただの一撃で倒されたのだ。

「―――ふう。これで竜殺しドラゴンスレイヤー……というのにはちと足りんのう」

血のりを払い、次なる敵を探し求めた彼。その胴体を、強烈なエネルギーの塊が撃った。魔力の矢マジック・ミサイルの秘術。

大地に転がった岩妖精ドワーフの神官戦士は、見た。次なる術の詠唱に取り掛かった闇妖精ダークエルフの姿を。

30歩の距離が遠い。次の攻撃を阻止する術はない。万物に宿る諸霊に助力を求める魔法の言葉が響き渡る。

闇妖精ダークエルフの掌に、強烈な光を放つ火球ファイヤーボールが出現した。

それが投じられる。

瞬間、闇妖精ダークエルフは絶命した。上空より矢で射貫かれたからである。

術者を失った火球ファイヤーボールはその場に落下。爆発した。

爆炎を背に舞い降りてくるのは一頭の鷲獅子グリフォンと、その背に跨る完全武装の乙女。

旅人だった。

彼女は口を開いた。

「よぉ。危なかったな」

その様子にしばし呆然としていた神官戦士はやがて気を取り直し、言葉を返した。

「ふん。あの程度、助けてもらわんでもなんとかなったわい」

よっこいしょ、と立ち上がった神官戦士。魔力の矢マジック・ミサイルで受けたダメージはない。火神の加護によってその破壊力の大半が吸収されていたから。

「が。まぁ礼は言っておく。手間が省けたからの」

「素直じゃねぇなあ」

苦笑を返し、そして彼女は乗騎ごと敵勢へ向き直った。

その横に神官戦士が並ぶ。

「ワシはもう4匹倒したぞ」

「オレは18匹倒したよ」

「どうせ小物ばかりじゃろ。ワシが言っとるのは大型の魔獣じゃよ」

「ゲッ……」

軽口をたたき合いながら、両者は同時に動いた。

鷹獅子グリフォンが宙を舞う。その背に跨る旅人は五指に四本の矢を挟み、そして連射。

四本の矢は正確に、四体の怪物を射貫いた。

対する神官戦士も踏み込んだ。魔法の手斧が、小鬼ゴブリンを頭頂から股下まで両断する。振り回される盾の一撃が大小鬼ホブゴブリンを跳ね飛ばす。肩口からの突進で巨狼ダイアーウルフごと騎手を粉砕し、振り回される手斧は一撃で確実にひとつの生命を奪った。

さらにはこちらへと突進してくる盾竜ステゴサウルスの巨体へひらりと飛び乗り、そいつを操る恐竜使いの小鬼ゴブリンの首を刎ねたではないか。

まさしく獅子奮迅の働き。

敵から乗騎を奪った神官戦士は、そのを巡らせた。

適当な手綱さばきで敵勢へと盾竜ステゴサウルスの進行方向を向けた彼は、突進を命じた。

最初ゆっくりと。しかしそれはたちまちのうちに凄まじい速度と化す。

飛来する矢は鱗で、あるいは二列の骨盤で弾きながら小鬼ゴブリンどもの群れへと突っ込む盾竜ステゴサウルス

泡を喰って逃げ出す敵勢であるが、何匹もが踏み潰され、骨が砕け、肉がへしゃげ、あるいは宙を舞って行く。

「ほほぉ。こいつはいいわい!」

このまま敵の本陣まで突っ込めるか?

そのような考えが神官戦士の脳裏に浮かんだ時。前方に立ちふさがる者がいた。

逃げる様子もなく、槍を背負い、両手で巨大な戦斧を構え、漆黒の甲冑を纏った女。

明らかに他とは格が違うそいつには首がない。

突進する盾竜ステゴサウルスと、迎え撃つ女。

四トンの巨体へと、戦斧が叩きつけられた。

凄まじい衝撃が神官戦士を襲う。宙に投げ出された彼は、見た。

刃が食い込み、どころか半ば両断されていく盾竜ステゴサウルスの巨体を。

降りかかる鮮血で真っ赤に染まっていく、首のない女の姿を。

大地に叩きつけられる寸前、彼の体を支えたのは鷹獅子グリフォンの嘴だった。

無事に降ろされた神官戦士。彼に向け、女はゆっくりと振り返った。

「……お前さんの事が哀れになって来たわ。

ここでその偽りの命、終わらせてやろう」

首のない女。姫騎士は戦斧を投げ捨て、槍を構える。

そんな彼女の前に舞い降りた鷹獅子グリフォン。その背から、旅人は声をかける。

「―――すまねえ。こんなことに巻き込んじまって。

オレの事は幾ら恨んでもらってもいい」

言い終え、旅人は弓を引き絞った。魔力が込められた素朴な弓を。

どちらからというわけでもなく。

両者は動き出した。

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