だんだん戦場がカオスになってきたぞ……(知恵熱を出す作者)

艦隊決戦とは、彼我の合意があって初めて成立する。

勝てない戦いをする者はいない。勝算があって初めて敵へと挑むものだ。

そして、海上は移動の自由度が極めて高かった。逃げ回れば補足するのは困難である。

だから、艦隊決戦が生起する状況、というのは極めて特異だった。

闇の軍勢からすれば、人の類の艦隊は脅威である。補給路を断つことができるのだから。先の魔法による嵐のような真似を何度もされればさらに被害は深刻なものとなる。実際の所、先の攻撃で儀式に必要な呪物や触媒は底をついていたのだが、そんなことは闇の軍勢に分かろうはずもない。彼らからすれば、艦隊を速やかに排除する必要があった。

対する人の類側からしても、敵艦隊の撃滅は急務である。内海の北岸は大軍の移動に向いていない。海路が発達していたため、道が整備されていないのだ。だから、軍勢の移動には海路が適している。敵軍の移動の自由。そして補給路の寸断という意味においても、制海権の確保が必要であった。

だから、双方が敵艦隊を撃滅する必要性を痛感していた、という意味では艦隊決戦の条件が整いつつはあった。


  ◇


北岸にある半島。その東側に上陸していた闇の軍勢の一部は、日がまだ高い時間帯に野営地を出発した。船に乗り込んだのではない。陸路で半島を縦断し、西側にある都市を襲う算段なのだ。道はお世辞にもいいとは言えないから、侵攻は遅いであろうが。一部とは言え二千という大軍である。

そして、艦船。こちらへも兵が乗り込み、出航の構えであった。二正面作戦なのだ。万一船団が壊滅しても、陸の部隊は残る。それどころか、人の類の軍勢が都市の救援に向かうには、まずこの船団を撃滅する必要があった。ちょうど互いの立場が逆になる格好である。

船団は出港すると、陸沿いに航行した。半島を迂回して、陸上部隊の支援に回るつもりなのだ。

半島周辺と、その西側は入り組んだ海域である。半島の先にある大きな島。その西に広がる群島が織り成す複雑な海流。

両軍が激突するならばここになろう。それが、闇の軍勢の目算である。

後は、交戦の時間帯の問題だけ。

人の類は昼戦を望むはずだが、闇の軍勢に有利なのは暗黒神の加護がある夜戦である。

ここにも駆け引きがあった。

それらは軍議を経て、此度の遠征の長である闇妖精ダークエルフの首長の元、決定された。

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