※この人子持ちです(関係ないけどこれから歓送迎会でつらひんですが何とかなりませんか)

―――不思議な闇妖精ダークエルフだ。

それが、女占い師にた一児の母親の、正直な感想だった。

彼女ら母子は、都市が陥落した際に逃げることがかなわなかった住人である。夫はどうなったか分からない。おそらく死んだであろう。

隣近所の住民は巨鬼オーガァに貪り喰われ、あるいは小鬼ゴブリンどもの慰み者となった。彼らの運命を鑑みれば、まだ闇妖精ダークエルフなのは疑いの余地もない。奴らは母子を虐待し、労働力として用いたが、少なくとも彼女らはまだ生きている。

さすがにこの女占い師に斬られたときはもう駄目か、と思ったが。

それにしても奇妙な一行である。新参者らしい彼らは、母親に根ほり葉ほり質問した。町の様子。闇の怪物どもの動き。港の状況。

どうもそのために母子を生かしたらしい。

もちろん母親は正直に答えた。機嫌を損ねたらどうなることか分かったものではない。

やがて、知っていることを話し終えると、新参者の闇妖精ダークエルフより母子に命令が下された。

「死体の手を拾ってきなさい。なるべく原形をとどめているものを幾つか。ですよ。それと、戻ったら入る前に一声かけなさい」

「は…はい」

それが人払いである、と理解した彼女は素直に従った。


  ◇


「緊張の連続ですね……」

母子をひとまず追い出した女占い師は、ため息をついた。闇妖精ダークエルフは闇の種族の支配階級である。相応しい威厳を保ち話すのは大変な心労を彼女に強いていた。

「…ぅ……」

「え?ああ。闇妖精ダークエルフの集落で、育ちましたから。奴隷として、ですけど」

女海賊の疑問に、美貌の魔法使いは苦笑した。

今の、色のない姿になる前のことはごくかすかにしか覚えていない。それでも闇妖精ダークエルフらしく振る舞う一助にはなった。

あとは、ハッタリである。

「しかし。気付いていたか?あいつがおまえさんを見る目」

熊皮の男に言われて女占い師は笑みを浮かべた。

は通用しそうで安心しました」

「……ぁ…」

「平気です。いざとなれば一度や二度程度」

「…ぉ…ぅ…!」

そこで、隼がさえずった。話が生々しい方向に進みそうになるのを中断する。

「で。これからどうするかだが」

狂戦士の発言に女占い師が頷く。

彼らは魔法使いを擁する強力な戦闘単位だが、しかしたった四人しかいない。破壊工作とは言っても限界がある。

それをやりくりして、人の類が体制を整えるまでの時間を稼がねばならなかった。

「夜になれば街に繰り出しましょう。実際に歩き回って情報を集めねば」

その言葉に、皆が頷いた。






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