もうちょっとこのメンバーで続くんじゃよ(例によってアドリブです)

「お目覚めですか」

「……おはよう」

女神官が目を覚ました時、そこは朝日が差し込む寝室だった。

石造りの部屋。調度など櫃と寝台くらいしか存在しないそこは、女神官自身の私室である。床に座り、こちらへと声をかけたのは少年。

「すまなかった。心配をかけた」

「いえ。……神官様。ですね」

「ああ」

女神官は苦笑。ひとつ訂正しておかねば。

も私だよ。あまり嫌わないでやってくれ」

「……え」

「別には―――を司る星霊としての私は、君たちの事が嫌いなわけじゃない。むしろ大好きだ。だって彼女も私なんだから。あの戦場でも君たちをちゃんと助けただろう?

ただ、巨大すぎる存在なだけなんだ。今の私は言うなれば、山脈を間近で見ているようなものだな。全体を目に入れようと思えば否応なく離れざるを得ない」

「……」

は任務をした。元々何百年もかけてやるつもりだったからね。機会が来るまでいつまででも待つつもりだ。元々神の眷属だから気は長い。一刻も早くこの肉体から出たいという欲求も我慢する」

「……じゃあ」

「私は、死ぬつもりはない。少なくとも君が天寿を全うし終えるまで生き続けると約束しよう」

言い終えると、半神たる女神官は、黒衣の少年を抱きしめた。


  ◇


暖かい。

女剣士が目を覚ました時、そこは水の中だった。である。

裸体。首は、腹部の上に置かれていた。

起き上がろうとした彼女は、己の魂魄の奥深くに、が設置されていることに気が付いた。覚えのないもの。されど、よく知っている気配がその向うからする。

女剣士は苦笑した。勝手に祭壇を設置していったに心当たりがあったから。加護を与えるという事なのだろう。自分は死者だというのに!!

まあいい。はありがたくいただいておこう。優れた武人が引く手あまたなのは世の常である。女剣士の場合はそれがたまたま神だっただけのこと。

横に目をやる。

そこに女剣士同様浮かんでいたのは、驚くべき美貌を持つ女の生首と、その胴体。どうやら無事だったか。

しかし、あいつめ。昔から道場では私に勝てたことがなかったというのに、よくもまああれだけ余裕綽々でいられたものだ。

神殺しの剣を手に入れた女剣士は、苦笑しながら起き上がった。


  ◇


水神へ捧げる朝の礼拝は、太陽が昇る以前に行われる。

一通りの礼拝が終わり、閑散とした聖堂。その前で、黒衣の少年と、そして首を魔法でつないだ女剣士は待っていた。友人が現れるのを。

「やあ」

出て来た女神官。彼女の顔は、晴れ渡っていた。

「……ぅ?」

「どうだったかって?。今まで聞こえなかったのが嘘みたいにしっかりと。今ならどんな加護でも引き出せるだろうな」

「じゃあ」

「ああ。することにしたよ。前世がなんであれ、今生では仕えたい神に仕えるさ。もう一人の魔法わたしはなんというか分からんがね」

そして、星神の眷属の魂を持つ、水神の女神官は、笑顔を浮かべた。

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