くっころにおける甲冑の重要性(めっちゃ大事)
―――中々に手ごわい。
闇祭司直卒の
問題は、それを守るべく立ちふさがっている
だから、
印を切り、呪句を唱え、万物の諸霊に願い奉る。
彼の手の中に招来したエネルギーの塊が、投じられた。
◇
自分は剣だ。もはやそれしか能がない。だが構わぬ。仕えるべき主を見つけた。人生の最期で、戦うべき目的を見出した。何の不足があろうか。それに、四人で軍勢を相手取る。これほど愉快なことはない。主人と合わせて既に三百四十二。いや今三百四十三に増えた。斬った。実は数えていた。新記録だ。楽しい。生身の体であれば体力がもたぬであろう。いやその前に矢に射抜かれるか、あるいは切られるか。どちらにせよ死んでいる。
己はもはや死人。ならばこの戦場を死に場所としよう。
そうして、三百四十九体目の敵を殺した時。
攻撃は、敵の体を貫通しながら来た。
投射されてきた魔法の稲妻は一直線に飛翔。多数の
―――ここまでか。
ひび割れ、宙を舞う
瀕死となった彼女はくるくると回転し、大地へと突き刺さった。もはや動けぬ主人の傍らへと。
敵勢を率いる
こちらへ向けて何やら呪句を唱え印を切っているが、はてさて。どんな魔法が来るのやら。
ふたりは、その瞬間を待った。
◇
黒衣の少年は道を切り開く。女神官の進むべき道を。
女神官は既に術を行使しすぎて疲労困憊だ。それでも戦棍を振るい戦っているが、限界は近い。少年も似たようなものだが。両の剣は既に刃こぼれし、血糊がつき、斬れなくなっている。体のキレも落ちて来た。それでも
不幸中の幸いは、敵右翼がゴッソリ消滅したことであろう。女剣士を追撃した雑兵どもが、丸ごと
女剣士と合流しても運ぶ心配をする必要はない。女神官は術1回分を残している。女剣士の胴体を運ぶための魔法を。だから、女剣士の所まで女神官を連れて行き、そして敵の追撃から彼女を守り切ればいい。
そうして、何度目か。背後を―――後に続いているはずの女神官の姿を確認する。
―――遠い!
いや、転んでいる。足をとられたか。そこへ敵勢がわらわらと寄ってきている。
―――お救いせねば!
少年は、来た道を戻った。
◇
―――急がねば!
女神官は、夜の森を、追撃される中走る。
内心、クスリと笑う。よくもまあ、こんな戦いに付き合ってくれたものだ。彼女だけではない。少年も。
だが悪い話ばかりではない。敵が自陣営右翼を吹き飛ばしてくれたおかげで、逃げられる目が出て来た。女剣士がやられた時はもう駄目かと思ったが。素晴らしい。これぞ神のご加護であろう。
風切り音。
振り返り、矢なので無視。石でできた粗末な矢じりが静止する。
これも不思議だ。刃物であれば石でできていようが関係なく防げるというのに、
前方に
特技頼りで突っ込む。敵勢が槍を振りかぶる。いやあれは!?
突き込まれた槍は、女神官の肉体に突き刺さった。
尖端を削り、とがらせ、火であぶって炭化させただけの槍。
―――なるほど。刃物ではないな……
足をやられた。転倒する。もう歩けぬ。
倒れ込んだ女神官へ、振り下ろされる木槍。
転がって避ける。敵の数が多い。よけきれない。治癒の加護は使えぬ。使えば意識を喪失するであろう。いずれにせよ死ぬしかない。
そこで、小鬼どもが撲殺された。
女神官の救い主は、黒衣の少年。刃こぼれし、血糊のついた直刀を両手で構えている。
策を考える。相棒に尋ねる。
「魔法はまだ残っているか?
それは術者のあとを追尾する透明な円盤を出現させる魔法だった。荷物を載せるための。少年が生首を運び、生首がその魔法で女神官を運べば、まだなんとかなるだろう。
だが、帰って来た答えは否定。
「……ぅ………」
そうか。魔法は使い切ったか。だが、猶予はある。遺言を述べる猶予は。
「―――行け。少年。私も、相棒も。もう駄目だ。私たちはここで死ぬ。相棒の首の面倒だけは見てやってはもらえないか」
「駄目です。オレがあなたを背負います」
「―――馬鹿を言うな。人を背負いながら戦えるわけがなかろう。死ぬぞ」
少年は、またも女神官の意向に背いた。四の五の言わせず女神官の肉体を担ぎ上げたのである。更に、女剣士の生首が入った木箱を吊るす。
「全員で生き延びるんです。勝手に死ぬなんて許しません」
「―――馬鹿者め」
「馬鹿ですよ、オレは。知らなかったんですか」
少年の声。惚れてしまうではないか。
そうして、女神官たちを背負った少年は、一歩を踏み出した。
風切り音。
斜め後方から飛来してくるそれに、女神官は、全身を盾としようとした。
矢は一本だけではなかった。雨のように降り注ぐそれは、大半が女神官の直前で停止していたが、それをすり抜けたいくつかが少年の肉体へ突き刺さった。
致命傷であった。もはや救う手段はない。
少年は倒れ、そして女神官は、投げ出された。
迫る敵勢。逃げる手段はもう、ない。
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