512神猫 ミーちゃん、餡子はおいしいよ~?

 今日は酒が進む肴が多いので、みんなの飲むお酒の量も多い。


 ルーさんとゼルガドさんにベン爺さん、グラムさん、コンラートさん、今日はセリオンギルド長がエールを飲むメンバー。レティさんとセラ、そしてゼルガドさんの奥さんのフーリアさんはワインだ。


 いつもはクラウディアさんもレティさんと一緒にワインを飲んでいるけど、今日は飲まないでみんなのお酌をしてくれている。ヴィルヘルム支店でエールを冷やしていたからお手のものだ。


 ちなみにクリスさんはあの出来事以降、口さえつけていないそうだ。相当、トラウマになったらしい。



「まだ、メイン料理が残っているので、おなかをいっぱいにはしないでよね」


「ペロはいつでもOKにゃ!」


「「OKで~す!」」


「にゃ!」


「がう」


「きゅ~」


「「かう」」



 どうやら、腹ペコ魔人たちは準備ができているらしい。


 一度に作れる量には限りがあるので、準備を始めよう。寝かせていた生地を、打ち粉をして伸ばし切る。残りの生地はエフさんに任せて、たっぷりのお湯で麺を茹でる。


 用意していた深皿にお湯を入れ温める。これをやらないとラーメンがぬるくなるからだ。一度お湯を捨てて、かえしを入れ鶏ガラでとったスープを入れ、茹で上がった麺を投入。具を盛り付け完成。


 ペロと宗方姉弟以外は麺を細かく切ってあげる。ラーメンスープもぬるいものを用意だ。



「こ、これは、にゃんという旨さにゃ! にゃん杯でも食べられるにゃ! 特にこのお肉が最高にゃ!」


「ま、まさかラーメンですか!」


「やっぱり、私たちは勝ち組だったよぅ……」



 宗方姉は泣きながらラーメンを啜る。ついでに鼻水もすすれよ!


 ペロは猫舌だけどフーフーして美味しそうに食べている。セラたちは……無我夢中だね。ペロと同じでオーク肉のチャーシュウが気に入ったみたい。


 ミーちゃんもムニュムニュ姉妹と一緒に仲良く食べている。ラーメンはお気に召したようだ。


 そのあと、エフさんの麺作りに合わせ、順次ラーメンを作って行く。ペロたちはおかわりを要求してきたので、今度は用意していた味噌ラーメンを作ってあげた。


 これも大好評。ペロと宗方姉弟は三杯目に突入した。



「これでも食通を自負していたが、初めて食べるものばかり。そしてすべてが恐ろしいほどに洗練されている。『グラン・フィル』のマスターがレシピを見て驚くのも無理はないな……」


「そうっすか? ネロの料理はいつもこんなもんっすよ?」


「ルー、お前は既にマヒしているぞ? これほどの料理を毎日食べていたら、外で料理を食べる気にはならんぞ。普通」


「そういえば、最近外で飯食ってないっすねぇ」


「お前の嫁になる人は大変だな」


「ネロを嫁さんにもらうっす!」


「み~?」



 笑えない……。ヤナさんが泣きそうな顔しているぞ。安心してください。間違ってもルーさんのお嫁さんにはなりませんから!



「み~!」



 翌日、セリオンギルド長はハンターギルドに出掛けていった。


 俺はフーリアさんと豆腐作り。



「家畜のエサが豆腐の材料だなんて……」


「大豆は栄養価が高いしどこででも手に入り、そして安い。豆腐作りは技術料と言っても過言じゃありません」



 何度か上手く固まらず失敗したりもしたけど、分量などのデータを取りながらやっているので、今後は作るのが簡単になるだろう。重労働には変わりがないけど。


「これを店で売るのですか?」


「今、これを売ったとして買う人はいませんね。これが食べ物ということっさえ知りませんから」


「では、どうするのですか?」


「まずは、神猫屋で売ろうと思います。今からそれを作りますね」



 豆腐を適度な大きさに切って串に刺し、作っておいた甘味噌を塗って火で炙る。しばらくすると甘味噌の焼けるいい匂いがしてくる。


 それをフーリアさんとエフさん、ミーちゃんに味見させる。



「これは……凄く美味しいです」


「腹にも溜まるからいいかもね」


「み~」



 合格点がもらえたようだ。田楽の味噌は甘味噌だけでなく辛味噌や柑橘類を混ぜた物、肉味噌でもいい。いくつかのバリエーションを作れば、お客も飽きないだろう。


 そしてそのうち豆腐の認知度が上がり、家でも豆腐を食べたいという人が出てくるはず。そうしたら、店舗販売すればいい。


 ついでなので、白玉団子作り。一つは白玉粉オンリーで。もう一つは豆腐を白玉粉と1:1で混ぜたものを作る。



「こっちはモチモチ、こっちはフワフワですね」


「どっちも美味しいけど、こうなると好みの違いかねぇ」



 俺は豆腐入りのフワフワの白玉団子が好きだな。まあ、これは当分売るつもりはないけどね。白玉粉は孤児院で作ってもらっているけど、大量生産は今のところ難しい。



 それから、ミーちゃん、餡子だけ舐めてないで、白玉団子の味を食べ比べてよね!


 餡子の品評会じゃないんですから!



「み~?」 






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