508神猫 ミーちゃん、抗議の声は忘れません!

 王都に戻り、アポなしで王宮に突撃。



「そんなに急いでどうしたの?」


「どうしたの? なんて、呑気な状況じゃありません!」


「み~!」



 かくかくしかじか。王妃さんにご説明。



「至急にアーデルベルトを呼びなさい!」



 すぐに、侍女さんに伴われ宰相様が現れる。



「至急のお呼びと聞きましたが、どのようなご用件で?」



 眼鏡横からチラリと俺を見る。



「ネロくん、もう一度説明をお願い」



 なので、宰相様にもかくかくしかじかと説明。



「ふむ」


「どうなの? アーデルベルト」


「文章は右筆に書かせましたが、内容は確認しております。明らかに内容が違っておりますな」



 やはりそうか。となるとハンターギルドの本部が意図的に内容を変えて各ギルドに通達したと見るべきだろう。



「その文章の控えはありますか? 今からゼストギルド長を訪ねて確認してきます」


「うむ。用意させよう」


「まかり間違えば牙王殿が敵に回ります。ヒルデンブルグと完全に分断され三方が敵に囲まれます。ハンターギルドを敵に回しても、牙王殿との友好はなんとしても守らねばなりません。特使の権限を使うことを許可します。早急に対応しなさい」


「「はっ」」


「み~」


「ネロくん、これは一刻の猶予もないわ!」



 はぁ……この忙しい時に、余計なことしてくれやがって! ハンターギルドの本部、許すまじ!



「何事じゃな? ネロくん」


「何事じゃな? なんて、呑気な状況じゃありません!」


「み~!」



 ミーちゃん、俺が抱っこしているテラをペロペロしていたけど、ちゃんと抗議だけはする。


 そんなミーちゃんと。テラをパミルさんに渡して宰相様からもらってきた書類の写しの更に写しをゼストギルド長に見せ説明。



「ハンターギルドはブロッケン山の主と戦争を始める気ですか!」


「ネロくん、落ち着かんか」



 ゼストギルド長が本部からの通達文書を見せてくれた。内容はヘルダギルド長が言っていたものと同じだ。



「まったく違う内容ですね。何を考えているんだ?」


「儂にもわからん。しかしじゃ、嫌な予感しかせん」


「取りあえずは、本部に問い合わせてみる。パミルくん。すぐに本部に連絡をいれ、こちらの通達文書を各ギルドに回したまえ。万が一間違えが起きれば、ハンターギルドはこの国……いや、この大陸にいられなくなるじゃろう」



 ゴブリンキングとの戦いを早期に終結させようと躍起になっている最中、新たな戦いを誘発させたハンターギルドは、間違いなく国々。いやすべての人々から糾弾される。


 そうなれば、ゼストギルド長が言ったとおり。この国どころかこの大陸から追い出されかねない。



「ネロくんはこの後、どうするのかね?」


「セリオンギルド長に会いに行き同じ説明をしてきます」


「ブロッケン山のほうはどうするんじゃ?」


「向こうはグレンハルトさんとヘルダギルド長がハンターを抑えてくれています。ニクセのハンターギルド長にもヘルダギルド長が連絡をしてくれる手筈になったいます。今すぐどうこうなることはないはずです」


「でも、クイントまでは遠いわよ? スミレちゃんも今いないのでしょう?」


「裏技を使いますので今から会いに行きます。味方は少しでも多いほうがいいですから。セリオンギルド長なら尚更です」


「裏技のう……。あまり無茶はいかんぞ。ネロくん」



 もしかして、ゼストギルド長はドラゴンのことを言っているのかな? グラムさんが飛び立つのを多くの人に見られているから、その目撃情報を元に犯人は俺と判断しているのかもしれない。


 合ってるけど、ドラゴンに乗るわけじゃない。乗ってみたい気はするけど、落ちたら怖いのでやめとく。そのご本人、グラムさんは自分のこととはまったく気づいていないね。





「本部は何を考えているのやら……」


「何を考えているのやら……。なんて呑気な状況じゃありません!」


「み~!」



 フェルママにペロペロされ、パルちゃんをペロペロしているミーちゃんが抗議の声を上げる。フェルママ気にせずペロペロ。仕方なくミーちゃんもペロペロを再開。



「どうしますか? ギルド長」


「行かねばなるまい。エバくん。こちらではなにも起きないとは思うが後を頼む。ついでにガイスに目を光らせておいてくれ」



 ガイスさん、白亜の迷宮でハンターの指揮を執っているらしいけど、あの性格なので元々仲の悪い騎士団と更に軋轢を生じさせているらしい。困ったもんだ。



「わかりました。ですが、王都までの移動手段はどうしますか?」


「こうしてネロくんがここにいるのだ、何かしらの移動手段があるわけだ。それに便乗させてもらおう」



 えっ!? まじ? どうしよう? これは不味い……。



「それよりも辺境伯になったそうじゃないか。おめでとうなのか、それともご愁傷様か?」


「ギルド長! おめでたいに決まってますわ!」



 エバさんそうでもないんです。いや……まじで。


 セリオンギルド長の準備があるので午後の三の鐘が鳴る頃に出発となった。


 その間にサイクスさんの所で遅い食事を取りながら、言い訳を考えよう。



「み~」



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