450神猫 ミーちゃん、ペロに依頼を出す。
データを見るかぎり、この火薬でも十分に使えることがわかる。
火薬量が一番多い場合、五十メルなら狙いどおり飛び、確実に金属鎧を貫ける。百メルになると狙いが上手く定まらず、まともに真っすぐに飛んで行かない。当たらないので威力はわからないが、それでも人に当たれば致命傷になりかねない威力はありそう。
「これでいいんじゃねぇか?」
「ロタリンギアも同等のものを造ってくると思われるので、その性能を超えるものが必要になります」
「なるほどな。モンスターではなく、人に勝つための武器か……」
「そういうことです。戦争がある限り、永遠と続く開発競争になるでしょうね」
「虚しい競争だな……」
「そうですね……」
「みぃ……」
勝者なき競争。真の平和がくるか、あるいは人類が滅びるかでしか終わらない競争。本当に虚しいね。
「こいつもネロの銃のように溝を刻んだり、連射できるようにするのか?」
「出来ますか?」
「み~?」
「弾の形状と溝はネロの銃と同じでいいだろうが、連射となると相当な工夫が必要になるぜ? なんか案はあるのか?」
なくはない。フリントロック式にするだけでも装填時間が短縮される。簡単のところだと紙製薬莢を作るのも一つの手だ。問題は滑空砲の前裝式なら簡単だが、これをライフリングを刻んだ後裝式に当てはめるとなかなか難しい。
一番の理想は雷管の作製だな。金属雷管が理想だけど、紙雷管でもいいのかな。
金属雷管だと現代の弾と同じで
これが無理なら次案は紙雷管。簡単に言えば陸上のスターターが持つ音が鳴るピストルだ。駄菓子屋で売っている、おもちゃの巻き上げ式の音の鳴るピストルと同じだね。
この二つのどちらかの雷管が出来れば、中折式のライフルや
ゼルガドさんに今の案を絵に描いて説明。
「なんで金属を叩くと発火するんだ?」
「小さな衝撃でも発火する火薬だからです。衝撃を与えると発火しやすい火薬を小さい容器に詰めて、弾を飛ばす用の火薬に引火させるんです」
「その雷管用の火薬と弾を飛ばす用の火薬は同じじゃないのか?」
「雷管用の火薬は瞬間的に発火して燃え尽きるもの。弾を飛ばす火薬はなるべくゆっくりと燃焼するものがいいですね」
「その違いはどういう効果を与える?」
「雷管用の火薬は瞬間的に燃え、弾を飛ばす火薬全体にに火を点ける役目です。火薬が爆発して弾を飛ばす原理は、火薬が燃えた時に発生するガスの圧力によって弾を押し出すので、より長く燃えてガスを発生させることが大事になります。まあ、我々にしたら一瞬のことですけどね」
「ネロさん詳しい……」
「黒歴史かぁ~」
「み~」
うるさい。何度も言うが俺はこれでも理系で、薬学部志望だったんだよ! その過程で興味のあった銃について調べただけだ! ん? それが黒歴史になるのか?
なので実際に簡単な実験をする。少量の火薬を紙に包み平らな石の上に置いてハンマーでおもいっきり叩く。パーン! と爆発する。
「「「おぉー」」」
ペロやルーさんたちから声が上がる。
「要するに、これよりもっと爆発しやすい火薬があればいいんだな?」
「ありますか?」
「み~?」
「ある。二つな」
ドワーフの鉱山でのみ使われているものらしい。一つは発火剤の一つで雷管の条件に合いそうなもの。もう一つは液体なんだそうだ。
なぬ? 液体だとぉ。
その液体は威力抜群だがとても取り扱いが難しく、熟練の採掘師のドワーフでさえ使用するには躊躇する代物なんだそうだ。
それって……ニトログリセリンじゃね? あるの? それが本当なら黒色火薬なんて必要なくねぇ? 銃じゃなくてダイナマイトか!?
ダイナマイトってどうやって作るんだっけ?
うわぁ、頭が混乱してきた……。まずは黒色火薬と褐色火薬を造ることを専念しよう。
「それって手に入りますか?」
「み~?」
「高いぜ。それに液体のほうは誰も運びたがらねぇから、自分で取りに行くしかねぇぞ?」
北のドワーフの国に行くのは面倒。聞けば、ニクセの東の鉱山町ブーセにもあるそうだ。ブーセっていうんだあの町……。一応、ブロッケン男爵領なんだよね。ニクセのリンガードさんに丸投げだけど。
スミレなら一日で着けると思うけど、ほかの馬では二、三日はかかるだろう。獣人の村に飛んで、転移装置を持たせてペロたちに行かせるか? 俺はそんな暇がないからな。
「よし、ペロくん、依頼を出そう」
「にゃんにゃ?」
「鉱山町ブーセに行ってきなさい!」
「えぇー、まじにゃ~」
「み~」
マジです。ついでにヤンくんも連れて行って、野営の仕方も教えてきなさい。
「なあネロ、行くのはいいが馬で行っても相当な時間がかかるぞ」
ルーさんのご意見はごもっとも。ルーさんもヤンくんも信用に値するし、ゼルガドさんはもはや一蓮托生の身、それにみんなは俺にとっては家族も同然。宗方姉弟にもバラしたから、転移装置のこと教えようと思う。
どう思う? ミーちゃん。
「み~」
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