410神猫 ミーちゃん、ブロッケン山のことなら任せなさい!
「ブロッケン山の主の息子の嫁とな?」
「み~」
「ブロッケン山との絆を強めるというのが表向きで、王妃様から白狼のモフモフも楽しみたいと言われまして……」
侍女さんたちがうんうん頷いている。クオンとセイランをモフモフしたくて両手がワナワナしてる姿は、危ない人たちに見える。いや、危ない人たちだ。
「アンネリーゼか……」
レーネ様も楽しみにしてるけどね。
「だがのう、ネロくん。ならば、なぜ我がヒルデンブルグには寄こさぬのだ?」
「み~?」
「はっ?」
侍女さんたちがうんうん頷いている。
「はっ? ではない。ブロッケン山の主、牙王殿とはヒルデンブルグとも条約を結んでおるのだぞ。ルミエールとのみ絆を深めるというのは、どうかと思うが?」
執事さんも加わわり、侍女さんたちと激しくうんうんと頷いている。
えっ!? まじ?
宗方姉弟はまだ緊張しているらしく、話が頭に入っていないようだ。クオンとセイランを見るが首を傾げて俺を見ている。わかるわけないよねー。
「本気ですか?」
「み~?」
「猫もいいが、やはり白狼であろう」
執事さんと侍女さんたちから、激しくブーイング起きている。
「う、うむ。やはり、猫も捨てがたい」
「み~」
いや、だからね、ミーちゃん。勝手に引き受けないでくださいます? 猫はまだしも、白狼は牙王さんに相談しないと駄目でしょう?
「み~!」
だから、任せなさい! ってその自信はどこからくるんですか。じゃあ、いいんだね? 引き受けちゃうよ?
「み~」
はぁ……仕方がない。猫のほうは、またペロの出動だな。大公様に渡すのだからヴィルヘルムで探してもらおうか。
「ファイナルアンサー?」
「ふぁ、ふぁいなるあんさー?」
「み~!」
了解です。そういうことなら、致し方ない。
「わかりました。ミーちゃんが何とかすると言ってるので、引き受けます」
「そうか引き受けてくれるか。それは重畳。しかし、決めるのはそちらの子猫なのか?」
「ミーちゃんは牙王さんにも烈王さんにも慕われているので、ミーちゃんが頼めば嫌とは言わないでしょう」
「み~」
「可愛いは正義なのだな……」
侍女さんたちがうんうん頷いている。そのとおり、可愛いは正義なのです!
「うむ。では期待しておる。して、話は変わるが、せっかく勇者殿がおるのだ聞きたいことがある。よいか?」
「み~?」
宗方姉弟が頷く。
「ロタリンギアの新しい王と将軍がどのような人物が知りたい」
俺も聞きたいな。そういえば詳しく聞いたことがなかった。
「おそらく、その将軍は陸山先輩だと思います」
「真はそういう目立つことしないと思う」
陸山はヤンキー君のことだ。性格は誰にでも噛みつき喧嘩を売る。反面、弱いものには手を出さないどころか、手を差し伸べる面倒見のいい人らしい。
頭は悪くないようで中学性の後半から家庭の事情でヤンキーに転身したが成績は落としていないそうだ。ちなみに、宗方姉弟たちが通っていた高校は進学校らしい。
ガキの頃からミリタリーオタクで、よくモデルガンを持ち歩いて警察に怒られることもしばしばあったそうだ。
「頭がよく、武器に詳しく、上に噛みつき下のものに慕われる。指揮官向きですね」
「あの武器に精通しておるということか……厄介よのう」
ヤンキー君が将軍とは……ヤンキー将軍。つ、強そうだ。
「みぃ……」
「遠藤先輩は軍師や影の実力者なんかが好きですから、正直王様になるとは思いませんでした。僕は奥村先輩とは付き合いがないのでわかりません」
「遠藤先輩は悪い噂は聞かないけど、いい噂も聞かない奴だね。おじいさんが剣道の道場を開いている。真も通っていたね。真は真面目な子で生徒会長をしてた。あの三人は幼なじみだよ」
なるほど、確かに裏でなにかしてそうな奴だった。王女と恋仲になったことで、裏から強制的に表に引っ張り出されたというところか。
一番闇落ちしそうな奴が王ってのもどうなんだろう。策謀好きな王女が、ちゃんと手綱を握っていられるかが問題だな。自滅するだけならまだしも、巻き添えを食うのは勘弁してほしい。
こうして話を聞くと、奥村さんが一番勇者らしいというのがわかる。委員長じゃなくて生徒会長だったとはね。頭もよく人望もあるのだろう。しかし、情報に引っかからないのが不安だ。
「前王を謀略で殺した王女と、裏で謀が好きな勇者。似た者同士で性格も合ったのでしょうね」
「策謀で王位を奪った王が、策謀で娘に亡き者にされ、偽勇者を王位に就ける。嬉しくはない組合せだがな」
ロタリンギアも勇者としての本命は遠藤か奥村さんだろう。ヤンキー君は予備で、うまくいけば勇者として覚醒すると考えたか?
「国境はどうなっているんですか?」
「まだ封鎖はしておらん。砦には兵と物資を送っておる。本格的に準備するのは年明けであろう。準魔王共の監視も怠っておらんよ。残念ながら、この戦いはもう避けられん」
人族同士で戦ってる暇なんってないのに。まあ、これが魔王の策ならしてやったりと手を叩いて喜んでいるんだろうけど。
暗いムードになって来たので、クオンとセイランを大公様に渡すとクオンとセイランが大公様の顔をペロペロし始める。大公様は目尻を下げ嬉しそうだ。
ミーちゃんはできた子なので、侍女さんたちのほうに向かって行き、撫でていいよ~とスリスリ。
「例の件じゃが、王宮と烈王様の島とを繋げることにした。ネロくんの都合がよければ、明日船が出るので向かってほしい」
「王宮のほうは今からでいいですか?」
「うむ。頼む」
執事さんに目隠しされドナドナされる。意味ないのにー!
「み~」
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