383神猫 ミーちゃん、大公様を説得する。
「ネロくんが手形なんぞ出して面会を求めたので、何事かと衛士が慌てておったぞ」
いやー、手形はいつも持っていたんですけど、顔パスで通してもらっていましたからね。でも、今日はせっかく特使の手形を預かってきたので使ってみました。
「み~」
ミーちゃんも、今日はスカーフを巻いておめかししています。
「特使か。じゃからいつものちびどもがおらんのじゃな」
執事さんと侍女さんたちが恨めしそうに俺を見る。そんな目で見ないでー!
大公様はそんなことを言いつつ、ミーちゃんを俺から奪って目尻を下げてモフモフしてます。侍女さんたちが怖い目で見てますよ?
「しかし、特使とは穏やかではないな。ロタリンギアの件かな」
違うのだけどちょうど良いので話をしておく。
年明けのロタリンギア進攻の際、俺が一軍を率いて援軍に向かうことを。
「ほう。ネロくんが援軍とは心強いのう」
「み~」
「兵の数は揃うようですが所詮寄せ集め、どこまでお役に立てるかわかりませんが、一泡吹かせるくらいはやるつもりです」
「うむ。期待しとるぞ」
「み~!」
ミーちゃんがやる気満々。神猫将軍誕生なのだろうか?
「それで、武器の改良はどの程度進んでいますか?」
宗方姉弟から聞き出したロタリンギアに渡った向こうの世界の武器の知識を、ルミエールとヒルデンブルグにも提供して開発を進めていた。以前、試作品を作った際、より強力に改良するといっていた件だ。
相手と同じ物を作っていも勝つのは厳しい、相手より強力な武器を作らなければ意味がない。こうして、軍需産業が発達し技術革新が進んでいく。そして、行く着く先は大量破壊兵器……。
「武器は続けて研究させておる。納得できるところで量産したいが、そうも言っておられん状況じゃからな。妥協できるところで量産を開始させておる。年明けまでにどれほど作れるかで、戦局が変わるであろうな」
ロタリンギアがどのくらいの兵士数で攻めてくるかにもよるけど、周りに魔王もいる状況の防衛戦、厳しい戦いになりそうだ。
「どうでしょう。ここで一つ、保険を作ってみませんか? うまくいけば、南の魔王連中に楔を打てるかもしれません」
「保険とな?」
「大公様もご存知だと思いますが、私は烈王さんとたまにお会いしています」
「うむ」
大公様は苦い表情を浮かべている。ヒルデンブルグの同盟者であるドラゴンの烈王さんと、ヒルデンブルグ大公家を差し置いて会っているのだから口には出さないけど快くは思っていないだろうね。
こればかりは本当のことを言えないのでしょうがない。ミーちゃんが神猫だとか、俺が烈王さんの弟子だなんて口が裂けても言えませんよ!
「み~」
そこで、烈王さんが話してくれた西の魔王の使者が訪れて、同盟交渉をしようとしたことを聞かせた。
「して、烈王様はなんと?」
「話は聞いたそうですが、断ったそうです」
「み~」
「であろう」
「ですが、烈王さんが言うには、烈王さんとの同盟というより烈王さんを介してヒルデンブルグと同盟を結びたがっていたと言っていました」
「なんじゃと!?」
「み~?」
やっぱり、驚くのか? 魔王相手だと、敵の敵は味方ってことにはならないみたいだ。
「……まさか、ネロくんの言っとる保険とはそれか?」
「み~」
「西の魔王は古の魔王なんですよね? その古の魔王がヒルデンブルグと同盟したと聞いたら、南の魔王たちはどう思うでしょう」
「気が気ではないであろう……」
実際には戦力としては全く期待していない。西の魔王にはゴブリンキングがヒルデンブルグにちょっかいを出さないように、けん制してくれるだけでも構わないと思っている。
ヒルデンブルグがいかに強力な騎竜隊を擁していようとも、ロタリンギア、南の魔王だけでなくゴブリンキングとも戦端を開けば、ルミエールが援軍を出すといってもただでは済まないだろう。
「しかし……」
「烈王さんは、構わないと仰っていました」
「み~」
「う、うむぅ……」
もう一声って感じなんだけど、これ以上のネタがない……ん? あれを使ってみようか?
「私はこの話を進めるべきだと思います。如何にヒルデンブルグが強国といえど、これ以上敵を作っては危険です。例え一時の仮初の同盟だとしても、ことが片付くまでゴブリンキングをけん制してもらえるならそれに越したことはないと思います」
「み~」
「言っていることはわかる……わかるんじゃが、どうやって魔王と話をするんじゃ?」
「烈王さんが使者がまた来たら、話をしておくと言ってくれています」
「み~」
「それは、さっきの構わないと言うことと一緒で容認ということか?」
「同盟を結んでいるとはいえ、烈王さんはヒルデンブルグに飛竜以外は手を貸してくれません。なので自分のことは自分でなんとかしろというスタンスです」
大公様は更に苦渋の表情だ。頭ではわかっているけど、感情が許さないってところだろう。それだけ魔王という存在は大きいのだろう。
「そこでどうでしょう。もし、この話を進めていただけるのなら、魔王への使者を私にしてもらえませんか?」
「本気か? 殺されるやもしれんのじゃぞ?」
「魔王というのに興味があるので会ってみたいです。そうそう、もちろんこの話を受けていただければ、私から一つ大公様に良いものを差し上げましょう」
「良いものとな?」
「良いものです。どうせ、誰も魔王の下に使者として行きたがらないでしょう? もし、私を使者にして魔王に殺されたとしても、大きな痛手にはなりません。逆に同盟を結んでこれたら儲けもの。ついでに良いものが手にはいるんですから、ウハウハじゃないですか」
ミーちゃんも魔王に会ってみたいよね?
「み~」
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