374神猫 ミーちゃん、レフリーストップです!

「結婚する時にはルーくんに爵位を授けますわ!」


「そんなもの貰ったところでルーくんが喜ぶとでも?」



 まだ、やってるよ……。ルーくん、爵位貰うんだ。騎士爵かな? 男爵だったりして? 俺と同格になっちゃったりしてね……。



「では、持参金として王都に土地と屋敷を用意しましょう」


「はあ……。ルーくんは白狼族だ。そんなのありがたくもない」


「さっきからあなたは否定ばかり。それでは義賊ギルドはルーくんになにをするというのですか!」


「決まっている。誰でも一人消してやる」


「……」



 さすがに王妃様も、レティさんの威圧感に黙ってしまう。っていうか物騒ですから。レティさん!



「なら……」


「はーい。そこまで~!」


「み~!」



 ミーちゃん、両者の間に入ってレフリーストップ! 立ち上がってみ~み~言いながら両手をパタパタさせている。それを真似する子分軍団。い、癒される~。



「ネロくん!」


「少年!」



 はいはい、不毛な争いはなにも生みませんよ。それに、これからミーちゃんが和解案を提示してくれます。双方、納得のいくものです。


 さて、子分軍団はまとめてレーネ様に預ける。両者の争いに固まっていたレーネ様が我に帰って子分軍団を抱きしめる。


 その間にラルくんがニーアさんに捕まってもふもふされている。それを恨めしそうに横目に見る侍女軍団。怖いよ。


 ミーちゃんが間に入りやっと落ち着きを取り戻した両者。それでもまだ、見えない火花が散っているのが、ヒリヒリと肌に感じる。正直、うざい。


 ということで、両者にミーちゃんの和解案を説明。



「ミーちゃんがそう言うのであれば仕方ありませんわ。矛を収めます」


「こちらも異存はないぞ。少年」


「み~」


「がう?」



 ルーくんの意見はさておき、将来のお嫁さん二人が決まったのである。ルーくん、なにが起きてるかさっぱりで首を傾げてみんなを見ている。ごめんな、俺には止められなかったよ。止めようとも思わなかったけどさ。



「が、がぅ……」



 という一幕があり、やっと宮廷料理長の下に来れた。みんなは向こうでお留守番です。



「で、どうする?」


 宮廷料理長に問われたけど、なにを作ろうか?


 取り敢えず、材料を食材庫から見繕って並べてみる。


 小麦粉、黒砂糖、牛乳、バター、生クリーム、卵、など色々だ。小麦粉は薄力粉を用意してもらった。ちなみに、小麦の種類によって薄力粉、中力粉、強力粉に分かれると教えてもらった。


 料理人ならこのくらい勉強しておけ。と言われたが、俺は料理人じゃないんですけど。


 まあ良い。ケーキを作るなら薄力粉が良いのは、向こうの世界でケーキ屋さんでバイトしていた頃に、俺もケーキを作らさせてもらった経験があり知っている。


 まずは、基本のスポンジケーキを作ってみよう。


 薄力粉をふるいにかける。これは異物の除去とダマにならないようにするためだ。実際にやってみると、殻の破片などの異物が除去できた。向こうで、こんなのが小麦粉から出てきたら大問題だけど、こっちでは普通だからね。


 さて、ケーキを焼く銅の型にパラフィン紙がないので、他の料理で使っている油紙を使用。バターもしっかりと塗っておくのを忘れない。


 次は、卵を泡立てる。料理番組だと、黄身と白身を別々に泡立てたりするけど、俺が教えてもらったのは両方一緒に泡立てるものだった。こっちのほうがふんわりと仕上がるらしい。


 ここで登場! ゼルガドさん特注泡だて器。卵を一気に泡立てて見せるけど、宮廷料理長は良い顔をしていない。あれ?


 宮廷料理長曰く、そのくらいの機械に頼らず己の腕でやれということらしい。泡立てる力加減や材料の状態など、自分で感じて調整出来ねば一流の料理人ではないと言っている。


 気持ちはわかるけど、俺は料理人じゃないし、マヨ作りが楽になりますよと言ったら、顔を引きつらせながら、



「マ、マヨなら仕方がないか……」



 などと小さい声で言っていた。勝ったな。


 軽く泡立てたところで湯せんしながら砂糖を加える。ここで秘密兵器を投入。



「なにを入れた」



 宮廷料理長に今入れたものを少量渡す。



「苦いな。だが、なんという芳醇な甘い香りだ」



 秘密兵器とはバニラビーンズ。スポンジケーキにもバニラエッセンス入れるけど、エキスを抽出してないからそのまま入れた。香り付けだから問題ないだろう。


 ここまで来てやっとふるいにかけた薄力粉を投入木べらで、切るように混ぜ込んでいく。


 最後に牛乳と溶かしバターを入れ混ぜ込んだら完成。


 型に流し込んだら百八十度のオーブンに入れて焼く。百八十度? 適当だよ。だいたいこのくらいかなって温度になったら入れただけ。ケーキ屋で経験した温度に近いと思う。


 オーブンの中を確認しながら三十分くらい。良い感じに膨らみ、表面がきつね色からこげ茶になる寸前にオーブンから出す。


 すっぐに他の料理人が作っていたものがオーブンに入れられる。


 型から外して実食。本当は冷ましてから食べたほうが良いのだけど、最初だから温かいうちに食べてみる。



「ほう。これがケーキか。なんとも言えん上品な旨さだな」



 他の料理人さんたちも、スポンジケーキの旨さに驚きながら味わっている。



「次に焼けたものは冷まして、デコレートしましょう」


「なるほど。味は良いが見た目は地味だから装飾するということだな。面白い」



 チョコレートがあれば良かったんだけど、ないものはしょうがない。


 この世界にあるのはわかっているから、いつか手に入れたいね。







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