371神猫 ミーちゃん、修行している間に温室が完成する。
ミーちゃんバッグの中のお魚がほとんどなくなったところでお開きとなった。
区長さんには明日も来てミネラルウォーターを持って行くように言っておく。レアとカイのお母さんならミーちゃんの家族も同然。ちゃんと元気になるまではミーちゃんのミネラルウォーターを飲むべきだ。いや、飲まなければならないのだ!
ということでちゃんと来てくださいよ。
自称天才剣士のポロにも、困ったことがあったらいつでも家に来ると良いよと言っておく。妖精族は大歓迎だ。
「み~」
猫たちが帰るとき、みんなミーちゃんの前に来て頭を下げていったのがとても印象的だった。
ミーちゃん、いいよ、いいよ、気にしないでまた来てね~♪ なんて言っちゃってるけど、俺は気にする。できれば勘弁してほしい。
さすがにみんなお疲れモード。疲れてないのは椅子に座って猫を撫でていたカティアさんと、猫を見ながらお酒を飲んでいたベン爺さんとゼルガドさんくらいなもの。
これから夕飯を作るのも大変なので、ミーちゃんバッグに入っている料理を出して食べた。
疲れたね~。ゆっくりとお風呂に入って寝よう。
「み~」
翌朝、朝食を食べてから牧場で時空間スキルの修行。ミーちゃんは重力スキルの練習だ。
牧場には馬たちとバロたちが放され、ルーくんとラルくんと駆けっこをしていて楽しそう。
俺は自分の作った空間に入る出るを繰り返している。入る感覚は掴めたけど、出る感覚が掴めない。空間内で長い時間、あーでもないこーでもないと試行錯誤。それでも、外に出ると数分しか経っていない。
正直、精神的にとても疲れる。
なので、ミーちゃんがプカプカ浮いている姿をゆっくり眺め癒しを得てから、神様のお酒のお供になっていたミーちゃんジャーキーを食べてからから空間に入っている。
ミーちゃんジャーキーは体力回復、精神力回復効果ありだからね。俺はグリルチキン味が好きかな。ルーくんとラルくんは残りのチーズカツオ味とバジルサーモン味を喜んで食べている。
ミーちゃんはなにも食べずに練習中。プカプカ浮いたミーちゃんを馬達が鼻でツンツンするたび、あっちへふらふら、こっちへふらふらと大変そう。
ラルくん、飛べるんだからミーちゃんに飛び方教えたら?
「きゅ~?」
そうだよね。飛び方が違うから教えられないよね。でも、ラルくんの翼って小っちゃいよね? その翼で飛んでるのだろうか? ドラゴン、不思議生物……。
などと、修行をしていると畑のほうに何台もの荷馬車がベン爺さんとやってきた。
「温室が届いたんじゃが、どこに建てるかのう?」
「み~?」
ベン爺さんが職人ギルドに頼んでいた硝子張りの温室が届いたようだ。本来であればもっと時間がかかるはずだったようだけど、職人ギルドの在庫でダブついていたのをベン爺さんが安く買い叩いて手に入れたらしい。
硝子はドワーフの国の重要な産業で、ドワーフ以外に作れる者が居ないそうだ。当然、ドワーフの国はルミエール王国の更に北にあるので運んで来るのも大変な上に、壊れやすいので非常に高価な品物。
今回、ベン爺さんが買ってきた温室は二十メル四方で、通常二千万レトプラス組立工賃がかかるところを組立工賃込みで千五百万レトで手に入れたそうだ。やるなぁ、ベン爺さん。
とは言っても、千五百万レト……高いね。
「み~」
そうだねぇ。ってミーちゃんも言ってます。でも、これもすべて投資です。この温室でサトウキビと甜菜そしてウコンの試験栽培をする予定。どれも、今後の神猫商会の主力商品になり得るものだ。
ベン爺さんと話をして温室はベン爺さんが家庭菜園程度にしか使っていない、広い畑の隅に建てることに決めた。牧場も畑も日陰を作るものが土地の端にある町の防壁しかないので陽あたりはばっちりだ。
場所が決まったので早速職人さんたちが組立を始める。見れば全員ドワーフだ。硝子は素人に作業させると破損させる恐れがあるので、職人ギルドでドワーフの職人さんを急遽集めたらしい。
でも、みんな親方クラスの方々なので、誰が頭になるか揉めている……大丈夫なのか?
「み~?」
どうやら、職人ギルドのほうでも最近噂になっている神猫商会と聞いて無理してドワーフの職人を集めてくれたらしいね。
「み~」
ミーちゃんちゃんも仲良きことは良いことなの~と申しております。薬師ギルドとは決裂したけど職人ギルドの人たちはどうなんだろうね? 一度、挨拶に行ったほうが良いかなぁ?
「み~」
組立の中ゼルガドさんも見に来て、
「ネロって、本当に金持ちなんだな……」
ってボヤいてた。ははは……。
そんなこんなでミーちゃんと数日修行を続けていたら温室が完成していた。
ベン爺さんに連れられて温室に向かうと立派な温室が建っていた。一メル四方の硝子を錆止めに白く塗装された鉄製の枠に塡め、薄い鉄製の板で十字に挟み隙間をなにかの樹脂できっちりとシーリングされている。それがいくつも組まれて温室ができている。
「り、立派ですねぇ」
「み~」
「とても良い物じゃが、金喰い虫じゃのう」
どういうことかベン爺さんが温室の中に入り説明してくれた。温室なのでこの中は一定の温度以下には下がらないように暖房器具が設置されている。他にも外の外気から地面の温度を守るために、内側の四方にパイプが埋められていて温水を循環させる装置も設置されているそうだ。それはすべてエナジーコアで賄われ、とてもお金が掛かるらしい。
まあ、それも必要経費だから仕方がない。
さあ、準備は整った。
ってことで、ベン爺さん、よろしくお願いしますね。
「み~!」
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