353神猫 ミーちゃん、ツンデレを知る。
馬車で送られて家に着き、ルーくんとラルくんを探す。
そういえば、王宮にはなにで行こう。
スミレは居ないし、ルーカスさんに頼んで馬車を借りるにも時間がない。
馬で行くいにしても俺一人だと全員を連れて行けないだろうね。みんなを乗せても全然平気なスミレって、つくづく凄いんだなと思う。
さて、では誰を連れて行こう? とは言っても、レティさんかグラムさんだけどね。面倒なので二人共連れて行こう。
「み~」
「……」
「私はパスだ」
グラムさんには拒否権がないのでまあ良いとして、レティさんはなんでパスなんですか?
「わんこ達と敷地周辺の見回りをしなければならないからな」
「却下です。それから、わんこではなく白狼ですからね」
お子ちゃまのルーくんと違って家の周りを警戒してくれている白狼は、お風呂で体を洗てあげてるからモフモフなのは認めるけど、狼特有の凛々しい顔つきなので間違っても犬には見えません!
「行きたくない……」
「駄目です」
「み~」
「ぐ~たらしたい」
「み、みぃ……」
あぁ~、ミーちゃんが呆れかえってるよ。ミーちゃんをここまで呆れさせる人ってそうは居ないよ。
「王宮にはカイが居ますよ?」
「み~」
「むっ……」
おっ、少し反応があった。もう少し揺さぶってみよう。
「王宮にはカイの兄弟も居ますよ?」
「み~」
「むむむっ……」
もう一押しかな。
「王宮には、ルカって言うペロに似た可愛い子猫も居るんだけどなぁ」
「み~!」
「ネロのことが心配だから、仕方なく着いて行ってやるんだからな!」
「み、みぃ……」
はいはい、じゃあ王宮に行く準備しますよ。それから、こう言うのツンデレって言うんだよ。ミーちゃん。
「み~!」
馬達に鞍をつけて王宮に向かう。
レティさんの馬にはルーくん、グラムさんの馬にはラルくんが乗っている。何気に普通にグラムさんが馬を操っていることに驚きを隠せない。後で聞いたらちょとだけドラゴンの気を強くしたら、おとなしく言うことを聞いたそうだ。
馬からすれば喰われるとビビったんじゃないだろうか? ちょっと馬が可哀そうに思える。
王宮に着き手形を見せれば、ニーアさんと馬丁さんがやってくる。馬丁さんはスミレが居なくて残念そう。でも、乗ってきた馬達も病気が治って、その辺の馬なんかに負けない立派な体格になっている。ベン爺さんが戦馬にもなれるとお墨付きを出したくらいだ。
ニーアさんは二人の見知らぬお供をチラリと見ただけで、いつものテラスへと案内してくれる。
「あら、迷宮の方はもう良いの?」
「ペロしゃん……」
ペロが居なくてがっかり気味のレーネ様に、ルーくんとラルくんが慰めに行ってくれた。
俺は軽く礼をしてから回答をする。
「迷宮探索は終了して、私だけ先に戻って来た次第です」
「そりらのお二人はネロ君の護衛かしら?」
「ペロとセラが居ないので、今日は二人を連れて来ました」
「み~」
レティさんはフード付きローブを脱いで跪き、無言で頭を下げる。グラムさんは……礼を取る気はないようで俺の後ろで憮然と立ったままだ。ははは……。
ニーアさんが王妃様の耳元でなにかを囁いている。なんだ?
「そう。そちらの女性がネロ君の第二夫人で、この前来たユーリティアさんが第一夫人なのね?」
「み~」
前にも思ったけど、うちの情報がダダ漏れのような気がするのだけど……。
ニーアさんに促され俺とレティさんは席に着くが、グラムさんは立ったまま俺の後ろに居る。座るように促したけど、首を振って立ったままだ。
「お座りになられては?」
ニーアさんも再度座るように促したけどグラムさんは首を振る。
「こうも見られていては落ち着かん。遠慮させてもらおう」
「み~?」
ニーアさんが少し驚いた表情を見せたけど、王妃様はしれーっとしている。横のレティさんを見るけど、王妃様と同じようにしれーっとしている。なにか暗黙の了解でもあるのかな?
「ネロ君。この方はネロ君から見て真に信頼に値する方かしら?」
「私がこの世界すべてに敵対しても、この二人は私の味方となるでしょう」
「み~!」
「そう。ネロ君だけじゃなくて、ミーちゃんも信頼してるのね。わかりました。さがりなさい」
王妃様のさがりなさいは俺たちにではなく、どうやら他の人に言ったみたいだ。レティさんを見るけど、やっぱり、しれーっとした顔だね。うーん。
「これで、座って頂けて?」
「良いだろう」
おいおい、グラムさん? 王妃様の前なんだから少しは礼儀をね? 事前にちゃんと説明しておくのだった……。
ちょっと緊迫した雰囲気だったけど、いつもの如くニーアさんがミーちゃんを王妃様の元へ連れ去られ、王妃様にご挨拶とスリスリ。
俺の元には代わりにルカとノアそれに、カイが足元にやってきてご挨拶してくれた。三匹を抱きあげると、ご挨拶の続きで顔をペロペロされまくる。
それを、羨ましげに見てくるレティさん……。はいはい、みんなレティさんにもご挨拶してね。
「にゃ~」
「「みゅ~」」
レティさんは嬉しそうに俺からみんなを奪っていく。ちょっと寂しい。
それにしても、少し見ない間にルカは大きくなった。出会った頃はあんなに小っちゃくて可愛かった子猫が、今ではミーちゃんより大きくなっている。声も少し成猫っぽくなってきたね。
すくすく育ち王宮で可愛がられていて、お兄ちゃんは嬉しい限りだよ。
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