319神猫 ミーちゃん、砂に興味がある?

 ルーさんとレティさんが戻ってきた。



「ありゃ、無理っす」


「ゴーレムだ。少年」


「ゴーレムだと……」


「み~?」



 ジンさんが珍しく嫌な顔をしている。ゴーレムって人形の事だよね。砂とか泥とか金属のRPGの定番モンスター。この世界にも居たんだ。



「ゴーレムってなんにゃ?」


「にゃ?」


「み~?」


「にゃんこ先生達、知らないんですか?」


「物質系モンスターで、パワータイプのモンスターでもあるのだよ」


「「にゃ?」」



 宗方姉よ、説明ありがとう。どうやら、ペロとセラはゴーレムを知らなかったようだ。と言う事は珍しいモンスターなのか?



「ゴーレムとは厄介だぜ。どんなゴーレムだ?」


「砂だと思うっす」


「サンドゴーレムか……サンドゴーレムならなんとかなるな」



 ジンさんが対ゴーレムの戦い方をレクチャーしてくれる。レクチャーと言っても物理的に攻撃して、どこかにあるエナジーコアを破壊するのみ。ゴーレムは物理攻撃しかしてこないので、凶悪さで言えばスライム程ではないけど、エナジーコアを破壊して倒すので結局何も得る物がない。


 それと、サンドゴーレムやウッドゴーレムなどは比較的物理攻撃が効くので倒しやすいけど、金属系ゴーレムになると固くて斬撃が効きにくくなり戦う事を諦めて逃げるそうだ。但し、大ハンマーや大槌などの打撃攻撃は有効で、実際に倒した例も過去にあると言う。



 そんなモンスター一体が目の前に居る。


 体長は二メルくらいで、意外とひょろっとしている。イメージ的に重厚で威圧感の塊って思っていたのに、目の前のゴーレムはどちらかと言えばふっくらとした棒人形のように見えるね。



「気を抜くなよ!  体のどこかにあるコアを破壊するまで攻撃を休めるな!」



 ジンさんの指示の掛け声の後、皆が一斉に動き出す。いつも煩いくらい騒いでるペロ達も一言も発しず、緊張した表情でゴーレムに向かって行く。


 早い! 皆が動き出した途端、糸の切れた人形にようだったゴーレムが普通に人並みの早さで動き出す。ジンさん以外の皆はゴーレムの動きに驚きゴーレムより一歩遅れた感じになった。特に宗方姉弟。ゴーレムは鈍足ってゲームの中の固定概念にとらわれていたのかもしれない。


 そんな動きの悪い宗方弟を、プログラムされたマシーンのように標的にするゴーレム。構えきれていないトシに容赦なくゴーレムは腕を振り上げる。宗方姉も必死に弓を構え矢を放とうとしているけど、焦っているせいか矢をつがえるどころか落としている。


 ザスッ、という音とともに宗方弟に襲い掛かっていたゴーレムの腕が、ジンさんの大剣により切り落とされる。



「気を抜くなって言っただろうが!」


「あ、ありがとうございます。師匠」



 ジンさん、師匠だったんだ。なんて事を思いつつ、銃でゴーレムを狙い撃ちまくる。運が良ければエナジーコアを破壊できるかなって思ったけど、今回は幸運スキルは良い仕事をしてくれなかったようだ。ただ、ゴーレムは俺の攻撃を嫌がり一旦距離を取った。



「わかっただろう! こいつに攻撃させる隙をつくるな!」



 ペロとセラがゴーレムに攻撃を加え、その次にジンさんとレティさん、そして、ルーさんと宗方弟が入れ替わり立ち替わり攻撃をして、ゴーレムに攻撃させる隙を与えない。俺と宗方姉は後方から皆が入れ替わる時にけん制として攻撃している。


 それでも、ゴーレムはすぐに攻撃された場所を修復してしまい、ダメージを負っているのかさえ判断できないでいる。



「み~!」



 ミーちゃんが何かに気付き声を出す。確かに今ゴーレムの右肩の所で何か光ったのが見えた。



「右肩にエナジーコアらしき物が見えました!」


「わかったぜ!」



 ジンさんがゴーレムの右肩から先を切り落とす。しかし、ゴーレムにこれといった変わったところは無い。切り落とされた右腕はズルズルと本体に向かって動いている。



「気味が悪いにゃ。トシ、そっちに持って行くにゃ!」


「了解です。にゃんこ先生!」



 宗方弟が槍でゴーレムの右腕を刺して、俺の方に放り投げてきた。



「ネロさん。任せました!」



 任せました……って、俺にどうしろと?


 ミーちゃん、俺の肩から飛び降りてズルズルと本体の方に動いている右腕にテシテシと興味深げに叩いている。


 ミーちゃん、ばっちいから触っちゃ駄目だよ。



「み~」



 仕方ないので足で踏みつけ動けなくして、腰に差してるけど出番の少ない聖銀の小剣でエナジーコアの見えた辺りを切り開く。が、探す前にすぐに元に戻ってしまう。


 面倒なので聖銀の小剣でエナジーコアのある辺りを滅多刺し。ガッキーンと聖銀の小剣音が固い物にぶつかった音がして、ジンさん達に周りを囲まれていたゴーレムが突如崩れ去り砂山と化す。もちろん、足元のゴーレムの右腕も砂になり、ひびの入ったエナジーコアが砂の小山から顔を覗かせている。



「終ったにゃ……」


「にゃ……」


「強敵でしたね。にゃんこ先生」


「私の矢は役立たずぅ。ガックシ……」



 切っても突いてもどんな攻撃をしてもキリがない相手だったから、確かに強敵だね。何の見返りも無いから一層疲れた感じがしてしまう。


 さあ、気を取り直して次に行こう。って、言おうとした時、ミーちゃんがゴーレムの本体が崩れてできた砂山にダイブしていった。


 ミーちゃん、その砂は猫砂には向かないと思うよ?



「み~!」





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