304神猫 ミーちゃん、パルちゃんと一緒に共同浴場に行く。

「パルちゃん!」


「みゅ~!」



 転移陣でギルドに戻ると心配そうな顔をしたエバさんが待って居た。余程心配だったのか人目を忍ぶ様子さえ見せず、パルちゃんに頬をスリスリさせている姿はいつものキリリとしている姿からは想像できない程、微笑ましい光景だ。


 この後、パルちゃんを連れて共同浴場に行く許可をエバさんからもらってから、俺は買い取りカウンターに向かう。他のメンバーはサイクスさんのところでおやつを食べるそうだ。



「オークを卸してくれるんだって?」


「俺達のは卸しませんけどね。ヘンリーさん」


「だとしても、どのくらいあるんだい?」


「25体分です」


「おー。それはそれは……おこぼれに預かれるかな」



 始原のうねりと北壁のパーティーが狩ったオークはクイントのハンターギルドで買い取りしてもらう事になっている。


 本来なら始原のうねりと北壁だけなら25体のオークを持って帰って来る事は不可能。収納スキルを持っていたとしても、その場で解体をして数体分のお肉を持って帰るくらいしかできないだろう。今回はセリオンギルド長のお願いもありミーちゃんバッグに入れて持って帰って来た次第だ。


 正直、俺達にはまったくメリットがない……いや、明日の晩にセリオンギルド長が『グラン・フィル』で奢ってくれる事になったからメリットはあったのかな? それに、セリオンギルド長にはお世話になってるからね。断れないよ。




「これから定期的にオークが卸されるのかな?」


「まだ、無理じゃないですかねぇ」


「え!? そうなのかい?」



 ヘンリーさんに迷宮内での事を聞かせると、とても残念な顔になった。



「当分、オークのお肉はお預けか~」



 あの商業ギルドのギルド長が居なければクイントでオークを売っても良いのだけど。あのギルド長の顔を思い出すと不愉快になってくるので、絶対に売りたくない。



「み~!」



 と、ミーちゃんも仰っています。



 取り敢えず、ギルドの裏の解体場にすべて置いていく事をヘンリーさんに伝えて酒場の方に移動した。



「なにこれ?」


「み~?」



 俺の目の前のテーブルに大量の料理が並べられている。ジンさんとルーさんの目の前には既に空けられたジョッキが四つあり、三杯目に突入してる……。



「旨いにゃ~」


「にゃ!」


「姉さん。このグラタン最高だよ」


「このハンバーグもどきも最高~♪」



 ハ、ハンバーグだと!?


 カオリンが持つ皿を見ると確かにハンバーグっぽいものが載っている。行義が悪いけど一口もらって食べてみる。うん、ハンバーグもどきだ。もどきだけどとても美味しい。繋ぎやタマネギなどの具が入っていない100パーセントお肉のハンバーグだ。お肉は牛肉じゃないね。なんだろう? どこかで食べた記憶がある気がする。



「オーク肉の切れ端だ。どうだ旨いだろう?」


「切れ端ですか。コストパフォーマンスはどうなんですか? サイクスさん」


「み~?」


「師匠の店で出た切れ端でな、本来なら出汁を取ったりするのに使うんだがもったいないから安く分けてもらった」


「み~!」


 なるほど、俺もハンバーグを作ろうと思った事があるけどお肉をミンチにするのが面倒で手を出していなかったんだよ。一度作ったら腹ペコ魔人共にいっぱい作れって言われるのが目に見えていたからね。お肉をミンチにする機械をゼルガドさんに作ってもらってからお披露目しようと思っていた。


 確かに安く仕入れられるのだろうけど、100パーセントお肉では数を作れないし元を取るのも大変だろう。なので、パン粉やタマネギ、キノコでかさ増しする方法をサイクスさんに教える。ついでに、デミグラスソースなどいろいろなソースと合う事も教えた。



「ネロはこの料理を知っていたのか……」



 まあ、日本人なら一度は食べた事のある、お子ちゃま人気のメニューだからね。



「ハンバーグって言う料理です。アレンジが山のようにできる料理ですよ」


「「ハンバーグ! ハンバーグ!」」


「ペロもハンバーグ食べたいにゃ!」


「にゃ!」



 これから共同浴場に行くんだよね? 忘れてないよね、みなさん……。





「あらあら、可愛い子だね。ミーちゃんの妹かい?」


「み~」


「みゅ~」



 番台のおばさんは両手に花の状態でミーちゃんとパルちゃんに頬をスリスリ、膝の上にいつの間にかセラが居る。そして、俺の目の前には五人分のフルコースの札が置かれている。い、いつの間に……もう、声さえかけられないとは……とほほほ。カオリンの分も含めて六人分のお金を番台に置いてお風呂に行きましたよ。



「いやぁ~。風呂は良いぜぇ。今まで使わなかったのがもったいねぇぜ」


「そっすね。今までは宿のシャワーくらいで問題なかったっすけど、ネロの家で風呂に入る習慣がついた後だと、一日入らないだけで気分が滅入るっす」


「ペロもお風呂は大好きにゃ! アワアワ楽しいにゃ!」


「他人に体を洗われるのはちょっと……と、思ったけど気持ち良いですよね。にゃんこ先生!」



 順番にさん助さんに体を洗ってもらいお湯につかる。この後はマッサージも待っている。極楽、極楽。そして、風呂上がりのフルーツ牛乳。トシは日本人だけあって腰に手をあてて飲む正当なスタイルを知っていた。俺とペロ、トシが並んでフルーツ牛乳を飲む姿を白い目で見ていたジンさんとルーさんは、そそくさと飲みに消えて行った。


 男五人のフルコースが終わるには結構な時間がかかったのでカオリンが怒ってるかな、なんて思いながら番台に向かうとキャッキャッウフフと黄色い声が聞こえてくる。


 簡単に帰らしてはもらえないようだね……。



「み~」


「みゅ~」




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