291神猫 ミーちゃん、後片付けします。

「圧倒的じゃないですか……」


「あぁ……そうだな」


「み~」



 目の前で起こっている事に驚きを隠せない。


 熊獣人さん達がオークの武器を振るう度、モンスターは真っ二つになるか粉々になるか、はたまたペッチャンコになっていく。


 これで前回の襲撃時に大きな被害を出したと言われても信じ難い。やはり、装備品は大事だと言う事だろうか?


 他の部族の方達も、こちらの数の優位性を活かして無理せず交代しながら戦っている。ペロ達もにゃん援隊メンバーと獅子奮迅の活躍を見せている。俺も負けていられないので、防壁の上からライフルでモンスター一体一体を着実に仕留めていく。


 モンスターの残りも百体を切ったくらいの時に、突如モンスターの動きが変わるのがわかった。あれほど、死を恐れず戦っていたモンスターが我先にと逃げ出し始めた。もちろんここで逃がすつもりは毛頭ないので追撃して殲滅あるのみ。


 ジンさんが盾持ちに指示を出して、モンスターの退路を断つようにして押し返す。獣人さん達も今までの恨みを晴らすかの如く苛烈に攻撃を加えていく。ほどなくして、動いてるモンスターの姿がなくなると、地が割れんばかりの勝鬨があがった。


 さてと、後始末を始めますか。



「み~」



 おそらく、今日中に攻めて来る事はないと思う。でも、油断は禁物。やれる事はやっておこう。暗闇の牙のみなさんには街の跡地に偵察に行ってもらう。夜が明ければ、街の跡地に攻め込む事になるので情報が欲しい。残りの者は興奮冷めやらないとは思うけど、体を休めてもらわないといけない。にゃん援隊を護衛に砦周辺のモンスターの死骸をミーちゃんバッグに収納していく。



「これ売れるにゃ?」


「わかんないけど、取り敢えずコアは売れるでしょう?」


「誰が解体するんだ? 俺は勘弁だぜ」


「マイナスにならないのなら。ハンターを目指す子達に依頼を出しますよ」


「おぉー! ネロさんの後ろに後光が見える」


「魔王から菩薩にクラチェンしたよ~」


「み~」



 みんな納得してくれたようだ。ゴブリンが肥料になるならこれもなるんじゃね? って打算もあるけどね。


 後片付けも終わり仮眠を取っていると、夜が明けきらぬ時に物見台の上から声があがった。



「何人かが旗を振ってこっちに来るぞ!」



 来ましたか、俺が予想していた二通りの内の良い方の予想が当たりそうだね。



 旗を振りながら近寄って来たのは猿獣人さんの使者のようだね。武装解除してもらい砦の中に入ってもらい話をする事にする。こちらの代表は俺がする事になった。部族の代表の方達が俺を指名したので、ここは謹んでお受けしました。



 猿獣人さんの使者は板切れに二つの物を載せて、恭しく差し出して来た。一つは生首、猿獣人の長の息子で今回の首謀者だそうだ。もう一つが、壊れた大きな水晶の珠、鑑定すると迷宮管理アイテム、使役の珠(破損)と出ている。


 猿獣人の使者が言うには、今回の事は全て長の息子が企てた事で自分達は脅されて従っていただけだと言っている。昨晩の襲撃失敗を知った長の息子は観念して自分の首を持って降伏しろと、後の禍にならないように使役の珠を破壊してから自害したと言っている。全面降伏するので命ばかりは助けて欲しい。そして食糧も分けて欲しいと言って来ている。


 なんて都合の良い事をってみんな思っていると思うけど、降伏とその条件を飲んでやり、武装解除して街の跡地から退去して村に戻るように言い付けた。



「どう思う?」



 使者が帰った後、部族の代表との話をする時にジンさんが問いかけてきた。部族の代表の方達も俺の意見を聞きたいようだ。



「半分本当で半分嘘でしょうね」



 みなさんその後の説明を待ってるようなので、俺の立てた仮説を聞かせる。おそらく猿獣人の長の息子は鑑定持ち、街の跡地で使役の珠を偶然見つけたのだと思う。それを利用して他の部族を支配下にしようと企んだ。もちろん、猿獣人の総意の元でね。


 最初は上手くいった、そして全てが上手くいくはずだった。俺達がこの階層に来なければ。でも、俺達が来た事で彼等の歯車が狂い始めたんだろう。俺達が与えた武器によって狐獣人の村の襲撃が失敗した事に始まり、目の前に砦を造られたうえ度々の襲撃失敗。そして熊獣人が食糧を奪った事での食糧不足。そして今回の総攻撃の失敗。


 おそらく、長の息子は途中から他の者に信用されなくなり、更に疑心暗鬼に陥っていたと思う。周りの護衛に猿獣人が居なかったのはそう言う事だろう。降伏しろと言って自害したのも嘘だろう。長の息子は降伏する気はなかったと思う。何故かって? 渡された長の息子の生首はもの凄い形相だったからだよ。どう見ても降伏しますって言う顔じゃない。他の猿獣人と争って殺されたんだろう。その時に使役の球が壊れ、争った跡が体に残った為、首だけ持ってきたってところだね。


 みんな俺の仮説を聞いて頷いている。納得してくれてるようだ。真相は闇の中だけど……掘り返してもお互いに遺恨が残るだけ、猿獣人さんの使者が言った事が真実で良いと言う事になった。


 さてと、また違った意味での後片付けをしないとね。



「み~」






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