285神猫 ミーちゃん、眼福です。

 休みたい、休みたいのだけどこの方達が休ませてくれない……。



「ネロ、お腹空いたにゃ~」


「にゃ~」


「冷えたエールくれ」


「ネロさん、汗かいたからお風呂入りたいです~」



 一つ一つ要望を叶えていく。先ずは夕ご飯からだろう。倉庫の中にシートを敷いてテーブルを二つ出す。人数が多いからね。そこに料理をミーちゃんバッグからどんどん出していき、大人達の為にエールも用意した。ノンアルコール組は果汁水ね。


 ミーちゃんの専用お皿に猫缶を出してあげて準備完了。



「「「「頂きます(にゃ)!」」」」


「にゃ」


「み~」



 みんな思い思いに飲んで食べ始めるのに対して、暗闇の牙の皆さんは手を付けないでいる。お腹空いていないのかな?



「なあ、俺達どこに居るんだっけ?」


「迷宮の中のはず……」


「これで良いのか?」


「「……」」



 ジンさんとルーさんが無理やりエールを飲ませ始め、やっと考えるのを放棄したようで食べ始めた。



「なあ、オークリーダーを倒した時、何したんだ?」


「そうそう、青く光ったと思ったら次の瞬間には、オークリーダーが倒れていた」



 えっ? 瞬間? そんな事はないでしょう。確かにダッシュはしたけど普通だったよ? ねぇ、ミーちゃん?



「み~」



 ミーちゃんも普通だよ~って顔してる。



「ネロさん、雷になってましたよ」


「新必殺技、雷神! ちゅ~に~」


「確かにあれは凄かったぜ。いつの間にあんな技覚えたんだ?」


「はて? 記憶にございません」


「ネロらしいにゃ~」


「にゃ~」



 これは要検証案件、何が起きたか俺自身が良くわかっていない。わかっているのは、ミーちゃんの力を借りないとできないって事。ミーちゃんとの合体攻撃って事だね。



「み~」



 みなさん呆れ顔で俺を見てるけど、気にしない結果オーライなんだから問題ナッシング!



「雷スキル、夢が広がりますね」


「早く覚えた~い」


「なに!?」


「雷スキル!」


「伝説上のスキルじゃない……」


「勇者……」


「……なのか?」


「違いますよ。雷スキルは確かに覚え難いスキルですが、誰でも覚えられるスキルです。使いこなせるかは別ですけどね」


「俺達でも覚えられると?」


「はい。でもおそらく使いこなせないでしょう」


「それは何故?」


「特殊な知識が必要だからです」


「それを教えれば良いんじゃね?」


「目に見えないものを信じ込ませるのは非常に困難です。幼い頃からその事を普通として受け入れてこないと難しいですね。大気スキルが良い例だと思います」


 それでも、最近は大気スキルの使い方を学び成果を出しているハンターさんは増えているとセリオンギルド長は言っていた。じゃあ雷スキルはどうなんだろう? 風や大気は目に見えないけどあるのは感じられる、だけど電気は難しいだろうね。自然の中で雷はあるけど、この世界の人はそれこそ神の所業と思っている。だからこそ、使えるのは神により召喚された勇者と言う構図が成り立っているんだと思う。


 単に勇者に電気の知識があったと言うだけなんだけどね。その知識を教えるのは電気と言うエネルギーを必要としないこの世界の人達には非常に難しい事だと思う。コアと言う物から得られるエネルギーが一般の世界だから、わざわざ電気を使おうとする人はいかれ頭のゼルガドさんのような人しかいないだろう。


 と言う事は、ゼルガドさんは雷スキルを使える可能性があるって事? 鍛冶技術を持つゼルガドさんならアルミニウムも作れたりして? まあ、その詳しい知識を俺達は持っていないのが残念、習った記憶はあるんだけどね。ボーキサイトがにゃんたらかんたら……アルミニウムが作れるようになれば凄いんだけどなぁ。


 流石に暗闇の牙のみなさんも難しいと理解したようで何も言わなくなった。お酒チームはまだ飲んでいる。レティさんも暗闇の牙のみなさんと飲んでいるので問題ないだろう。モフモフ成分が足りないのか猫姿のセラを餌付けしながら飲んでるけどね。


 さて次は、お風呂かな? この倉庫の横に井戸があるのでそこに作ろうと思う。ペロ達を連れて外に出て井戸の脇に土スキルで湯船を作る。ここには土が捨てる程あるので楽に作れる。その他の備品も作り終わり、次は肉体労働。君達の出番だよ。



「「「えぇー(にゃ)」」」



 井戸から釣瓶で水を汲み上げ湯船に溜めていく。調子に乗って大きな湯船を作ったので入れる方も大変。三人はエッサホイッサと掛け声を出しながらやっていたので、村の人が不思議そうに見に来たりしている。ピタピタに溜まったところで水スキルでお湯にする。



「流石、ネロさん」


「水スキル欲しいな~」


「確かに便利にゃ」



 飲みニケーションも一段落したようなので、レディーファーストでお風呂に入ってもらう。いつもながら、キャッキャッウフフと楽しそう。男性陣一部戸惑いながらも風呂に入りあがったので、ゆっくりミーちゃんと入ろうかなって思っていたら狐獣人さん達が集まって居るね。なに?


 村に風呂が無い訳ではないようだけど、毎日は入れないようだ。お子ちゃま達だけでも風呂に入れて欲しいと懇願されれば、嫌とは言えないよね。ただみんなが入るには小さすぎるので、村の中を流れる小川の近くに大きな湯船を作った。村人の人海戦術で湯船に水を汲み、俺が水スキルでお湯にする。


 外の世界ならコアを使った湯沸し器があるのでここまで苦労はしない。でもここにはコアを使った技術がないのでしょうがない。外から道具を持ちこんでもコアを加工する技術も無いので駄目だね。やはり、この件が終わったら移住を勧めてみよう。


 村人全員は無理だったけど、お子ちゃまとご老体の方々は入れる事ができ大変感謝されたよ。でも、疲れた……。


 倉庫に戻ればみんな爆睡中。そんな中レティさんだけ起きていて、一緒にお風呂に入ってくれると言う。急いで冷めたお風呂に水を足してお湯にして、レティさんとお風呂に入る。もちろん、ミーちゃんも一緒です。レティさん、いつもながらの眼福ご馳走様でした。



「み~」





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