251神猫 ミーちゃん、孤児院を作る準備をする。

 屋敷の家具類などの家財道具も良い物らしく、売るとすれば高い値が付くらしい。衣類は流石に売れないだろうと思っていたけど中古の衣類を専門に扱う商会があるらしいのでそこに売る事にする。武器防具類は売る当てがあるのでそのまま収納、酒も同じ。食料品はほとんどが保存食なので使い道はいくらでもある。干し肉などは牙王さんが喜ぶだろね。他にも塩漬けのお肉や魚、小麦粉などがある。


 闇ギルドの幹部達の屋敷は全部売却。残すのは孤児院に流用するマフィアのボスの屋敷だけ。家なんて持っていても使い道がないから売却で良い。後は絵画などの美術品や宝石などのアクセサリーはウイラー道具店行きかな。シュバルツさんなら高く売ってくれるだろう。美術品などはニーアさんにも見せた方が良いのだろうか? そう言えばシュバルツさんに男爵になった事伝えてないね。シュバルツさんも隠しているけど元は男爵、何か言われるかな?


 孤児院はこのベルーナにも作る予定でいる。王都中心部に孤児院に適した土地建物が余っているようには思えない。大きな屋敷は北区の貴族街になってしまうので難しい。それなら思い切って、うちの敷地内に作れば良いんじゃないでしょうか? って事になった。問題は建物、今現在うちの屋敷の隣に妖精族さんの為の宿泊施設が建設中。ついでにお風呂も男女別に入れるように改装中。これに孤児院の建物までとなると大工さん達もお手上げだろう。


 そこで、もともとある屋敷を移築する事を考えた。うちの屋敷は王族の別荘をここに移築した物なので、それを専門にやっている業者がいるはず、商業ギルドで聞いてみよう。



「これはブロッケン男爵様。ご依頼の人材は間もなく揃いますので、もうしばらくお待ちください」


「そうですか。それは助かります」


「み~」


「それで、今日はどのようなご用件ですか? 神猫商会様の店舗でしたら今少しお時間を頂きたいと思います。今、良い物件があり持ち主との交渉中でして、決まり次第見て頂ければと思っております。必ずや気に入って頂ける物件だと思っておりますので」


「良い報告を期待してますね。今日、ここに来たのは建物を移築する業者を紹介して頂けないかと思いまして」


「新築ではなく、移築でございますか?」


「新築でも構わないのですが、急ぎの事なので移築の方が早く終わると思いましたので」


「確かに時間は新しく建てる事に比べれば早く済みますが、決してお安くはないですよ?」


「構いません。ついでに大きな屋敷も紹介して下さい」


「み~」



 そこからはトントン拍子で話が進む。丁度、移築の専門業者が王都に来ているらしくすぐに話をつけてくれる事になった。屋敷の方も貴族街にあるいくつかの屋敷を紹介してくれたので、その中で一番大きな屋敷を頼んだ。屋敷の中の改装をしてくれる大工さん達も一緒に紹介してもらえた。


 今回は即金でお金が動くので商業ギルドは各業者への仲介と屋敷が売れた事により、俺とのwin-winの関係でニコニコ顔だったね。


 後はそこでお子ちゃま達の世話をしてくれる人を探さないとね。これも商業ギルドに頼もうかと思ったけどやめた。孤児院の運営に利権の絡んだ者は入れたくない。孤児院は純粋な慈善事業でなければならないと思っている。じゃないとそこで育つお子ちゃま達は真っ直ぐ育たないと思うから……お金と言うだけの繋がりで働く人ではお子ちゃま達に注ぐ愛情に限界があるだろう。本当の我が子のように愛情を注いでくれる人っていないかなぁ。



 うちに帰り、ルーカスさんに相談してみる。



「そうですね。子を亡くした方や夫を亡くした方なら働いてくれると思いますが……」


「責任者、ですか?」


「はい。多くの孤児を集める事になりますので、周りに目を配れる方でないと問題が生じる事になりかねないかと」



 孤児院の院長が必要って事だね。働いてくれてる方を統括し近隣の住民とも上手くやれ、尚且つお子ちゃま達にまで目を配れる。そんな人、神猫商会に欲しいくらいだよ。



「あのぅ。教会にお願いしてみては如何でしょうか?」


「教会?」


「フローラ神は慈悲の神です。教会でも孤児院を持っていますので、手を貸して頂けるかと思います」



 カティアさんの言う、フローラ神……ポンコツ神様のお姉さんだよね。



「み~」



 教会ってあんまり馴染みがないんだよね。神社だってお正月ぐらいしか行った事ないし。一応この世界の神様については調べてみた事がある。この世界を造った神様は別にいるけど、主神はフローラ神でその下に色々な神様が従属神としているそうだ。実際に教会として崇めてるのはフローラ神だけど、場所によってはその他の神様を一緒に祭っているらしいね。例えば、フォルテだとフローラ神と豊穣を司る神様を祭っている。



「頼んで来てくれるものなのでしょうか?」


「お願いする価値はあると思います。教会が孤児院に手を貸してくだされば、近隣の方々も安心するでしょうから」



 どうなんだろう? 宗教って正直怖いんだよね、それこそ利権が絡んできそう。できるなら、近寄りたくなかったんだけど……彩音さんが居てくれたらなぁ。ポンコツ神様のお姉さんだし、一度も挨拶無しってのもなんだから挨拶がてらに行ってみようか?



「み~」





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