237神猫 ミーちゃん、成敗です!

 髪は白髪混じりだけど、眼光の鋭く若い頃はさぞや美人だったと思わせる顔立ちの方だ。



「はじめまして、ギルド長。今度ここの領主になりました、ブロッケン男爵ネロと言います」


「み~」


「ふん。ゼストから話は聞いてるよ。いろいろ楽しい事をする小僧だそうじゃないかい。子猫の事も聞いてるよ。本当に気品のある子猫なんだねぇ」


「み~♪」


「それほど、楽しい事をした記憶はないのですど……」


「それで、何の用だい。挨拶に来ただけって訳じゃないんだろうさね?」



 話が早くて助かるね。



「ちょっとばかし、大掃除をする羽目になりまして、ハンターを雇いたいと思います」


「掃除なら、自分の所の警備隊を使いな」


「その警備隊も大掃除の対象でして……」


「ほう。裏に闇ギルドがいる事を知っての事かい?」


「ええ。ですが、闇ギルドを相手にするのはまた今度です。先ずは、表のごみの掃除からです」


「フッフッフッ……面白いじゃないかい。ゼストの言う通りさね。どのくらい集めれば良いんだい?」


「できるだけ多く」


「金は払えるんだろうね。タダ働きはご免だよ」


「誰に言ってるんですか? これでもここの領主ですよ」


「み~」


「そうこなくちゃね! ヘルダだよ。ヘルダとお呼び」



 凄いノリの良いギルド長だ。嫌いじゃないよ。


 ヘルダギルド長はさっそく、ハンターギルドに備え付けられている半鐘を職員に鳴らさせる。緊急招集を意味するものなので、街の人々に影響がないと良いのだけれど……今更か。


 王都程ではないにしろ、街に残っていたハンターさん達が集まってくる。その数およそ五十人。



「ヘルダ婆さん。緊急招集なんかかけて、とうとう耄碌したか?」


「若造が言ってくれるじゃないかい。良いかい良くお聞き! こちらにこの街のご領主様になるブロッケン男爵様がおられる。ちょっとばかし大掃除をしたいって事で、お前達ハンターの手を借りたいそうさね。良い仕事をすれば、謝礼は男爵様がたっぷり出してくださるそうさ。お前達、気張りな!」


「「「おぉー!」」」



 たっぷり謝礼を出すなんて俺言った?



「み~?」



 取り敢えず、ハンターさんを五人程連れて役所に戻り、捕まえた悪玉五人と女性二人の見張りをしてもらう。テオさんとテオさんの知り合いの警備隊の隊員からハンターギルドに戻る道すがら話を聞いて、警備隊の悪玉の事を聞く。主要な悪玉は警備隊長含めて六人、その子飼いの隊員が十人居るらしい。五十人しか居ない警備隊の十六人ってどんだけぇー。


 そこで、ハンターギルドでハンターさんをに三つに分ける。警備隊は昼と夜に分かれているので、今詰所に居るのは昼の隊員。夜の隊員は自宅に居るだろう。俺は警備隊の詰所に、テオさんの知り合いの警備隊の隊員には夜間勤務の隊員を、テオさんには役所の悪玉五人の家を押さえてもらう。



「それじゃあ、出発さね!」



 えーと、ヘルダギルド長も行かれるので?



「何してるんだい。グズは嫌いだよ!」


「み~」




 警備隊の詰所に着き、ヘルダギルド長が大声を張り上げる。



「この腐れ隊長、年貢の納め時だよ。ここに来て、ご領主様にその汚い面見せな!」


「なんだと、このクソババァ! てめぇ何言ってるかわかってんだろうな!」



 髭面の大男が出て来て、ヘルダギルド長より大きなダミ声で怒鳴り返してくる。それにしても、なんて品の無いやり取り……。同類と思われたくないんですけど。



「お前の悪事は既にご領主様の知る所、観念するさね!」


「ご領主様だぁ~? 隣に居る小汚い猫を連れたガキじゃねぇだろうなぁ。ワハッハッハッ!」


「ハッハッハッ! こいつ処刑決定! みなさんこいつ共々、悪党を捕まえちゃってください!」


「み~!」


「「「おぉー!」」」


「おい、お前ら出て来て手を貸せ!」


「そいつに手を貸した者は全て同罪とみなす!」



 俺の事は良いとして、ミーちゃんを小汚いだとー。どの面下げて言いやがる、このブサ男。許すまじ!


 詰所から五人の隊員が出て来てブサ男と一緒にハンターさんに剣を向ける。下っ端五人の腕はたいした事ないけど、ブサ男は隊長だけあって強い。と言うか、ハンターさん達が弱い? 依頼を受けずに街に居たハンターさんだけに期待しちゃ駄目って事かな……。


 仕方ない、手を貸してあげよう。銃を抜いて一発! 太ももを撃ち抜く。



「グッガッ!」



 膝をついた所をハンターに取り押さえられる。ハンターさん三人がかりでもまだ暴れている。オーク並のタフさだね。仕方がない眠ってもらおう。紙包みを出して中身をブサ男に風スキルで送ってやると、パタリと倒れて動かなくなった。



ったのかい……?」



 ってねぇーよ!



「眠らせただけですよ」


「み~」


「薬とは、えげつない技さね……」



 なんとでも言ってくれ。これが俺の戦い方いきるみちだよ。


 残りの五人も降参してロープで縛られている。一先ず、これで安心かな。



「み~」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る