196神猫 ミーちゃん、お客様を大事にします。

 宗方姉弟は肉体的にも精神的にも疲れていたのだろう。降りて来ないので見に行くと二人共ベッドで寝ていた。夕飯までにはまだ時間があるのでそのまま寝せておくことにした。



「み~」



 ヤン君達が戻って来たので、二人の事を説明しておく。勇者である事は話してあったけど、一緒に住む事になるとは思っていなかったようだ。普通に接してとお願いしておく。


 屋台の売り上げも順調で、定番の各ギルドのお姉さん達が常連になってくれてるそうです。日中も暑くなって来ているので、アイスキャンディーやフローズンも順調な売れ行き。ウハウハです。


 お餅の在庫が少なくなってきたと言う事で、表で餅つきをする事にする。


 ララさんがもち米を蒸して持って来てくれ、ルーさんとペロが杵をつき返しはイルゼさんがする。みんな臼の周りでお餅がつきあがるのをお座りして待ってます。もちろん、味見係です。神猫商会は品質管理にうるさいのです。



「み~」



 ペッタン、ペッタンと餅をついてると、その音に誘われるかのように宗方姉弟が外に出てきた。



「うわぁー、餅つきですねぇー」


「ネロさんが作ってたんですね」


「やってみる?」


「「はい!」」



 餅つきなんて今時の若い子はやった事がないでしょう。宗方姉弟はルーさんから代わってもらいやってみるけど、四苦八苦して餅をついてる。簡単そうに見えるけど、あれで慣れるまでは相当に難しい。力があっても返しの相方とタイミングが合わないと大変な事になるし、無理な態勢でやると次の日に筋肉痛になってこれまた大変な目に合うからね。


 宗方姉弟は自分達でついた、つきたてのお餅を何もつけずに食べている。



「美味しいね、トシ」


「自分でついたから尚更だね」



 そうでしょう、そうでしょう。神猫商会のお餅は異世界一ですからね。



「み~」



 まだまだ、お餅をつくのでこの場はルーさんに任せてミーちゃんと家のキッチンに行ってくる。キッチンではカティアさんとヤナさんが夕食作りをしていて、ララさんがもち米を蒸かしていた。


 俺は冷蔵庫に保存してある餡子を火にかけお湯で溶き少量の塩を加える。ついでに冷蔵庫に牛乳があったので温めて蜂蜜を適量加える。溶かした餡子と蜂蜜を入れた牛乳に先程の餅を適当な大きさに切って入れていく。定番のあんころ餅に、変わったところで牛乳餅です。


 みんなの所に持っていく前にカティアさん達に味見してもらう。ミーちゃんもね。



「み~」



 ミーちゃんには小さなお皿にあんころ餅を出す。当然、カティアさん達には餅入りを出した。



「美味しいです」


「餡子がお餅に絡んで、お団子とはまた違った味わいですね」


「この甘い牛乳に入ってるのもデザートみたいで良いです。私はこれ好きです」



 うん。好評のようだね。ミーちゃんは?


 最初に牛乳の方を何度かペロペロしたけど、すぐに餡子の方を舐め始める。



「みぃ……」



 どちらもお気に召さなかったようです。それでも、餡子の方はしっかり舐めきったけどね……。


 お餅を持って表に出ると、ジンさん達も餅つきに加わってた。



「これ、なんか楽しいぜ!」


「ふむ。団子は食した事はあるが、これが団子の素なのだな」


「美味しい~」



 神猫商会の主力商品ですからね、美味しいのは当然!



「み~」



 持ってきたお餅をみんなにごちそうすると、こちらも好評。特に牛乳餅が思った以上に好評なので驚いた。



「にゃんか、懐かしい感じがするにゃ。心があったかぽかぽかになる味にゃ」


「にゃ」


「がう」


「きゅ~」



 ララさんが最後のもち米を持ってきたので、最後くらいは手伝おうと思う。なんて思っていたら結局、ジンさんとグレンハルトさんが楽しそうに餅をついていたのでお任せしました。



「ふぅー、良い汗かいたぜ。ひとっ風呂行ってくるかぁ」


「「風呂!」」



 何をそんなに驚いているんだね。宗方姉弟よ。



「ネロさん! お風呂あるんですか!」


「入りたい!」



 ロタリンギアの王宮に居たのなら、風呂位あったんじゃないの? それとも使わせてもらえなかったとか?



「向こうはサウナ文化なんですよ」


「あるのは、水風呂……」



 ロタリンギアはルミエール王国の東隣で南に砂漠があると本には書いてあったけど、気候はたいして変わらないはず。南のヒルデンブルグ大公国はサウナが主流だけど、普通のお風呂もあったよね。文化風習って不思議だよね。



「み~」



 ミーちゃんは風呂好きです。と言うより、うちの子達はみんな風呂好きだね。



「入りたいならいつでも入れるから、お好きにどうぞ」


「「やったぁ!」」


「しょうがにゃいにゃ。ペロがお風呂の入り方を教えてあげるにゃ。特別にゃよ?」



 ペロくん、彼女らはペロくん以上にお風呂に詳しいよ。なんてたって、元日本人だから。



「お願いします! にゃんこ先生!」


「私は一人で入ります……にゃんこ先生」


「そうにゃのか? 残念にゃ……。みんにゃ、行くにゃよ!」


「おう!」


「「お、おう」」


「がう」


「きゅ~」



 ヤン君も巻き込まれたね。それより、いつからペロは先生になったの? にゃんこ先生……ぷっ。


 イルゼさん達と道具を洗浄し片付ける。水スキル持ちはこう言う時便利。水を自由に動かして洗い、最後に熱湯で煮沸消毒までできてしまう。便利なスキルだ。


 神猫商会、食品衛生には気を使ってますよ。お客様を大事にしてますからね。



「み~」





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