191神猫 ミーちゃん、ネロを気遣う。

 レティさんがミーちゃんからテシテシ称賛され、ニヤケ顔でミーちゃんの顔をムニュムニュしてます。


 レティさんが何をやったのか知りたいところだけど、次は俺の番だ。異世界の先輩としてビシっと決めないとね。ミーちゃんをレティさんに預けていつもの剣帯をつける。



「お、おい。その腰にあるの銃じゃねぇのか!」


「銃ですよ。それがなにか?」


「卑怯だろう!」



 泣きやんだヤンキー君がワーワーうるさい。



「安心してください。銃は使いません。手加減できませんから」


「この世界にも銃があるのか……」


「いえ、無いですよ。これは俺が設計して作ってもらった物です」


「知識チートかぁ。原理がわかればなんとかなるって事なのかなぁ?」


「姉さん。その原理が難しいんだよ。火薬の材料は知ってるけど、配合比率や入手方法。そこまでの知識が無いとできないよ」



 宗方弟の言う通り。なんとなく知っているでは知らないのと一緒。そんな知識チートができるのは事前に準備している自宅警備員か天才位なものだよ。



「ちなみに火薬は使ってません。なんで、本物より威力は若干落ちると思われます」


「火薬を使ってない……?」


「まあ良いじゃないですか。この国のハンターギルドには情報公開してるんで、訓練さえすれば使える人が増えると思いますよ」



 爽やかイケメン君は刀? のような物を持っている。鞘から抜くと月明かりに反射した美しい刀が姿を現す。



「この刀は我が家に代々伝わっているものでね。銘は無いが長曽禰派の作と言われている」



 ほう、長曽禰ですか。ペロの愛刀の本物が出てきたね。



「ネロさん、武器を構えなくて良いんですか?」


「構えたところで、たいして使えないんで必要ないですよ」


「舐められたものですね」



 爽やかイケメン君が上段の構えから刀を振り降ろす。ゾクリ背筋に悪寒がはしり、直感スキルが警報を鳴らす。



「!?」



 不味いと思い横に飛んで転がると、今まで居た場所を何かが凄い速度で通りすぎ、地面には一筋の軌跡が残っている。


 斬撃を飛ばした!? マジすっか? 当たっていたらただじゃ済まなかったよね……。



「今、殺す気だったろう」


「何を言ってるんですか? 躱すと思ったからやったんですよ。だって、俺に勝つの余裕なんでしょう?」



 爽やかイケメンの顔から、なんとも薄汚いいやらしい表情に変わる。この顔がこいつの本来の顔なのか? これって、既に闇落ちしたか、最初から真っ黒だったんじゃないの?


 今の攻撃当たれば死んでもおかしくなかったのに、全く躊躇しなかった……これ、不味くねぇ。



「どうしたんです? 来ないならこっちから行きますよ。っと」



 は、早い。転がって躱すのがやっとだ。こいつはヤバイ。



「ミーちゃん、レティさん! 撤収。ジンさん、こいつ以外連れて逃げるよ!」


「み~!」


「承知」


「お、おう!」



 宗方姉弟はグレンハルトとローザリンデと一緒に居る。ジンさんが奥村さんとヤンキー君の所に向かおうとした時、一陣の風と共に一人の男がジンさんと奥村さん達の間に姿を現す。



「おっと、こっちの勇者様まで連れていかれると困るんですよね。ジン」


「ダスク!」



 どっかで見た顔、思い出せない。って、言うより。爽やかイケメン君改め闇遠藤の攻撃を躱すので精一杯。けん制の為、空気大砲を撃つけど空気大砲ごと切られてる……。



「チッ、五闘招雷ですか。一人でも厄介なのに……そっちは死んだ事にして諦めますか……。勇者様方、ここは引きますよ」


「煩い雑魚が! 行くなら勝手に行け! 俺はこいつを殺す!」


「ハァ……。ジン、ここは引かせてもらいますよ」


「ダスク、何故貴様がここに居る!」



 ダスクと呼ばれた男が、ジンさんの問いかけを無視して胸元から何かを取り出して空に投げる。次の瞬間、大きな音と閃光がはしった。こりゃ、ますますヤバいよ。


 仕方ない。ホルスターから銃を抜いて、闇遠藤の脚を撃ちぬく。



「ガッ! き、貴様、殺してやる! 必ず殺してやるからな!」



 みんなは連れて来ていた馬に分かれて乗ったようだ。俺は走ってレティさんの乗ってる馬に飛び乗る。俺が飛び乗ったのを見て、ジンさん達が馬を走り出させる。遠くから馬の音が聞こえてくるので反乱軍の騎馬だろう。後ろを振り向き、地面に土スキルを発動。長さ五十メル、幅五十セン、深さ二十センの溝を二本作った。


 体が重く感じる。スキルを自分の能力以上に無理矢理り使ったせいかもしれない。



「みぃ……」


「大丈夫、ちょっと疲れただけだよ」



 ミーちゃん心配して、レティさんの肩から俺に飛びつき顔をペロペロしてくれてます。



「しっかりつかまっていろ! 少年。まだ、油断はできないぞ!」



 ははは……頑張ります。


 などと思っていたけど、数分もしないうちに頭も重くなってきた。うぅっ、つらいよ……。



「みぃ……」



 ミーちゃんが俺を気遣うように、覗き込んでくる。ミーちゃんの体温でミーちゃんを感じていなければ、意識を保つ事はできなかっただろう。


 どのくらい走ったのかわからないけど、レティさんが操る馬が止まった。気付けば人数が増えている。いつの間にかスミレが横に居る。スミレが居るって事は、ここは安全なのかな?


 ごめん。もう、意識を保っていられない……。



「みぃ……」






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