186神猫 ミーちゃん、作戦開始です。
朝食は簡単に済ませる為、醤油の焼きおにぎりと味噌汁。
「これは米か?」
焼きおにぎりを食べたジンさんが不思議そうに聞いてきた。
「そうですよ」
「米って言ったらよう、パサパサしてるかぐちょっとしてるもんじゃねぇのか?」
普通に炊いたらパサパサだね。ぐちょっとしてるのはリゾットの事かな?
「炊き方に工夫すると、こんな感じになりますよ。美味しいでしょう?」
「旨い」
「香ばしく焼けている所も美味だ」
「このスープもお米に良くあって、おいしいわ~」
「味噌汁って言います。神猫商会で味噌汁の元を扱ってますので、どうぞご贔屓に」
「み~」
「「「……」」」
レティさんと案内人さんは何個食べる気でしょう……。二人共、五個目に突入してます。義賊ギルドってご飯食べさせてあげてないの?
「それは違うぞ、少年。我々は忙しいから、すぐに腹に入る物を食べなければならない。少年の用意した物は食べやすく、かつ旨い。我々にとっては夢のような食事だ」
案内人さんがウンウン頷きながら、焼きおにぎりを食べ続けている。
六個目を食べたところで朝食が終了。いやぁー、良く食べたね、呆れるより感心しちゃったよ。
「み~」
やっと出発。反乱軍は街道を王都方面に西に進軍しているので、一旦街道からずれ北東に進路を取り反乱軍の後ろに回り込む。潜入は、反乱軍が野営した夜となる。
道なき道を案内人さんの後に続いてスミレを走らせる。途中何度か義賊ギルドの人が接触してきて、案内人さんと情報交換をしていた。レティさん曰く、敵の斥候を義賊ギルドの方で意図的に誘導してこちらに来ないようにしてくれているそうです。
そのおかげで、夕方前に反乱軍の後ろに回り込み後方ニキロの所で追尾する形に持って来れた。
義賊ギルドの報告では反乱軍は野営の準備に入っているそうだ。俺達は反乱軍の野営地が見渡せる山の上に来ている。
木々の間から野営地を見渡すと、敵ながら一万人近い軍隊は壮観だね。いくつかに区分けされているから、貴族や兵に分かれているんだろう。
レティさんが指差した後方の区画がロタリンギアの野営地みたいだ。大きなテントが十個程あるので、そのうちのどれかに同郷の召喚された者達が居ると思う。
「どうやって潜入する。少年」
「あれだけ厳重だと見つからずに潜入するのはむずいぜ」
「隠れて潜入するつもりはありませんよ。堂々と正面から行きます」
「み~」
「「「「!?」」」」
レティさん以外のみなさんに装備を外してもらい。服を着替えてもらう。ジンさん達には使用人役、レティさんにはいつものローブを着てもらいフードで顔を隠し剣を装備して護衛役をやってもらう。ルーくんにはひと働きしてもらう予定なので一緒に連れて行く。
スミレ以外の馬に酒樽や荷物を載せ準備完了。
そう、行商人として堂々と反乱軍の陣営に潜り込む作戦です。補給部隊を置いてけぼりにして進軍してるので物が不足してるはず。それが、狙い目。
「じゃあ行きましょうか」
「「「「……」」」」
流石にスミレとラルくんは連れて行けないので、案内人さんとお留守番。ぶるるって気を付けないよと仕草を見せる。スミレとラルくんの頭を一撫でして出発。
「きゅ~」
「行って来るね」
「み~」
反乱軍の陣営の正面側に回り込み堂々と近寄って行くと、斥候と思われる騎馬兵が近寄って来た。
「止まれ! 東辺境伯の軍とと知って近付くか!」
「私どもは行商人でございます。こちらに東辺境伯様の軍隊が来ると聞いて、全財産をつぎ込み荷を集めて来ました。何卒、商売のご許可を頂けないでしょうか」
ローザリンデさんにお金の入った小袋を渡し、斥候の兵に渡してもらう。兵士は、中身を確認してから
「ふむ、それは大義。しかし、これも役目。商人ならギルド証を見せろ」
ローザリンデさんに更にお金の入った小袋を渡し、斥候の兵に渡してもらう。
「私どもは、この商機を元に王都で商人になりたいと思っております。どうか、私どもにご慈悲を頂けないでしょうか」
兵士は小袋の中身を確認して考え込んでいる。流石、貴族の兵士、強欲だな。更にお金の入った小袋を渡したよ。
「成程、商機か。我々の勝機にも繋がる言葉だ。よかろう、その商機を掴むが良い。将来は我々貴族の御用商人も夢ではないぞ! ワハッハッハ!」
君達の運命は風前の灯火、神猫商会の代表は船は好きだけど沈み逝く泥船に乗る趣味はないぞ。
「み~」
辺境伯様にと酒樽をいくつか渡すと上機嫌で貴族の兵が中心の区画で商売して良いと、お言葉をもらったので布を広げて品物を並べる。やはり補給が滞っているのか、瞬く間に売れていく。それと、もう勝った気でいるのか、釣りはいらないとか、倍以上の金額で買ってくれる兵までいる。あの世に行く者にお金は必要はないよね。ウハウハです。
さて、この後どうしようか? と考えていると先程の兵士が一人の貴族を連れてやって来た。
「お前が行商人か? 若いな。荷はこれで全部か?」
「私どもには収納スキル持ちがおりますので、多少の在庫はまだございます」
「ふむ。ならば、この陣の最後方にいる傭兵部隊の場所に行き残りを売ってまいれ」
「傭兵部隊でございますか?」
「余計な詮索は無用。ただ、商売に励め」
「ハッ! 承りました」
ラッキーです。向こうからチャンスがやって来た。貴族側から言えばロタリンギアへの気遣いなんだろうけど、あまりにも不用心過ぎません?
兵士が案内してくれてロタリンギアの兵と引き継ぎを終えて、陣の前で店を広げる。国が違うので貨幣が少し違ったけどローザリンデさんが為替レートを知っていたので、ロタリンギアの貨幣での販売を許可した。ここでも、瞬く間に売れていく。
「あの立派なテントには、どなたがいらっしゃるのですか?」
「ああ、あれか? 我々のたぃ……お頭のテントとお客人のテントさ」
「お頭ってどんな人なのですか? やっぱり熊みたいな人?」
「ハッハッハ。逆だな。ひょろっとした、神経質な人だ。ほとんど外に出てこない」
「お客人の方はどうなんですか」
「まだ、若いな連中でな。将来のゆぅ……幹部候補さ」
「そうなんですか……」
「どうだ、なんか珍しい物は無いか? お客人の退屈しのぎになるものはないかな?」
「そうですね……この珍しいお菓子なんてどうです?」
出したのは餡子団子とみたらし団子。同郷の者なら気付くはず。
「食いもんか? そうだな丁度良いかもな」
兵士は団子を持って、大きいテントに向かって歩いて行った。
さて、反応はあるかな?
相当な量を売り払い、帰り支度を始めると先程の兵士がやって来てさっきの団子はまだあるか? と聞いてきたので作れますよと答えたらテントに引っ張られて行きました。
「良いか、中の人達に無礼は許さんからな。黙って、作ってお出ししろ。共の者はそこで待っていろ」
みんなに頷いてみせ、ミーちゃんとルーくんを抱っこして兵士とテントの中に入る。
「作ってお出しできると言う事なので、お連れしました」
「ルーくん、お願い」
「がう」
ルーくんが兵士を見ると、だら~んとなって気味悪い笑顔を浮かべている。
第一段階の作戦成功ですよ。
「み~」
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