178神猫 ミーちゃん、右前脚コイコイは百発百中です。

 あれから五日間、カヤちゃんの水スキルの訓練を重ね、イルゼさんにはお餅や餡子などの材料作りをお願いしてた。


 商業ギルドで屋台の申請も終わり、中央広場の噴水前に場所を借りる事ができた。普通ならこんなに簡単に借りられない場所のようだけど、前回の鮮魚販売の事があり特別に融通してくれたみたい。ラッキー!


 全ての準備が整ったので、明日神猫屋を開店する事にした。


 今回はペロを使った策は弄せず、普通にオープン予定です。代わりに、ユーリさんとパミルさんにギルドのお姉さん方への宣伝をお願いしてます。ギルドのお姉さん達は固定客になるからね。


 開店当日、バロに屋台を引かせて中央広場に向かう。後ろから俺がミーちゃんとカイが入ったキャリーバッグを持ち、ルーくんとラルくんが後ろをついてくる。


 中央広場に着き開店準備を済ませてから、ハンターギルドのパミルさんに開店準備ができた事を告げ、テラを抱っこして連れて来る。今日一日、テラとカイは神猫屋のお手伝いです。


 まだ早朝だと言うのに屋台の前は賑わっている。ミーちゃんが招き猫になり、カイ、ルーくん、ラルくんがお客さんにモフモフられ中。


 今回もミーちゃんの右前脚コイコイ招き猫は百発百中。ハンターのお姉さん達が釣られてやってくる。



「み~」



 そこにテラを加えモフモフ勢揃い、更に人が集まるわけですよ。何気にバロも人気があるようです。



「お客さん一杯です!」



 ピンクのフリルの付いたエプロンに身を包んだカヤちゃんが興奮気味。アイスキャンディー類はまだ売れ行きが少ないけど、もう少し日が登れば売れ行きは伸びるでしょう。


 お団子類はハンターギルドと商業ギルドのお姉さん達が、買いに来てくれたお陰で順調に売れ行きは伸びてます。もちろん、今日は全品半額ですよ。


 俺はお団子を一口サイズにしたものを皿に載せ、男のハンターさんに試供品として食べさせている。なかなか、あの中に入って行く勇気のある男性は少ないからね、味さえわかってもらえれば買ってもらえると思う。



「お団子各種四本ずつ頂戴にゃ!」



 誰かと思えばペロ達です。ギルドで依頼を受け、これから街の外に向かうみたいだ。餡子、みたらし、新作のきな粉を、王都で良く使われている大きな葉っぱに包みイルゼさんがペロに渡している。



「ありがとうございました」


「み~」


「また来るにゃ!」



 イルゼさんがペロ相手にも真面目に対応している。ミーちゃんもペロ達に気を付けてね~って営業スマイル。良くできた店員さん達ですよ。



「どれ、儂も一種類ずつ頂こうかのう」



 ゼストギルド長も買いに来てくれましたよ。



「ギルド長特製ブレンド茶で食べると最高ですよ」


「ほほう。それは楽しみじゃのう」



 ゼストギルド長のお団子を包んでもらっていると、中央広場に立派な馬車が入って来た。



「王家の馬車じゃのう」



 降りてきたのはニーアさんでした。だよねー、ロイヤルファミリーが簡単に街にくるはずないよねー。大公様が特別だったんだよ、きっと……。



「この度は神猫商会様が屋台をお出ししたと伺い、王妃様よりお祝いにお花を届けるように仰せつかって参りました」



 一緒に乗ってきた侍女さん二人が胡蝶蘭のような花の鉢植えを、屋台の両脇に置いてくれた。とても綺麗な花だね。



「み~」



 ミーちゃんがニーアさんにお礼を言ってます。


 となると、お返しが必要だね。イルゼさんに十本ずつお団子を作ってもらう。



「王家御用達かのう。これで安泰じゃな」



 ゼストギルド長がちょっと皮肉った言い方をしてきたよ。


 はははは……。確かに嬉しいサプライズの反面、周りに恨まれないか心配。ヴィルヘルムは人が良い人が多かったけど、ベルーナの人は結構殺伐とした感じがあるからね。向こうはドラゴン二人だから何かあっても問題ないけど、イルゼさん達は普通の人だから注意が必要だ。



「安心せい、近くじゃからな儂が目を光らせておく。それにじゃ、ハンターにも御用達となれば自ずとハンター達が守ってくれるじゃろう」


「当面の間、お願いします」


「うむ」



 ニーアさん達はお団子ができるまでの間、ミーちゃん達を思う存分モフってました。特にテラとカイはレアとノアの兄弟姉妹なので、念入りにモフモフしていたようです。


 お団子もできたのでミーちゃんバックからちょっとお高めのお皿を出してもらい、お団子を載せてニーアさんに渡します。代金は貰いませんよ。


 ニーアさん達とゼストギルド長が帰られても、大盛況でこの日を終えました。


 この日から五日程、俺とミーちゃんは屋台のお手伝いをしてしていた。明日からはイルゼさんにお任せしようと思っていた時に、みたらし団子をくわえたジンさんが寄ってきたね。冷茶が欲しいのかな?



「二日後に決起するみたいだぜ」


「二日後ですか?」


「ヴィッテルスバッハ候の軍が王都近くまで来てるしな、明日、第一騎士団が軍事演習と称して王都を出る、上手くこちらの策に乗って来やがったぜ」


 第一騎士団が王都から出るのか……大丈夫なんだよね?



「ネロも明日から王宮に入れよ」


「えっ! なんで?」


「なんでって……お前も狙われてるからだろ」


「そうなんですか?」


「反乱軍に付いた貴族にはよう。ゾルムス家の子飼いの貴族共も参加してるんだぜ。ゾルムス家に金を貸してたマフィアと闇ギルドもな。恨みてんこ盛りだぜ」


「俺のせいですか? 勝手に突っかかってきて、勝手に消えていっただけでしょうに……」


「まあ、そうなんだがなぁ。金蔓にしてた奴らにとっちゃあ、ドラゴンに肉かっさらわれたようなもんだからなぁ。諦めろ。これが終われば連中もおとなしくなる。まあ、生き残ってたら、の話だがな。クックックッ……」



 反乱か……て事は、勇者が来るって事だね。説得頑張らないとね。



「み~」




 第二章  魔王降臨。で、どうするの? 完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る