147神猫 ミーちゃん、目が点になる。

 神猫商会屋台オープンから五日が経ちました。


 屋台は大盛況です。大公様のお陰で街の人達から完全に認知された模様で、少しずつですが常連客も付いています。客層の三分の二は女性、残りはお子ちゃまに、男性と言ったところです。自前で入れ物を持ってくれば、持ち帰りもできるようにしました。近くの各ギルドのお姉様方からの強迫……もとい熱い要望を受けたからです。


 アレックスさんもクラウディアさんも慣れたもので、昨日からは二人だけで屋台を任せていますが問題無いようです。なので、俺達はそろそろルミエール王国に戻ろうと思っている。その前に一つ試さないといけない事があるので、街の外に出て周りからの目を気にしないで良い場所に来ている。



「何するにゃ?」


「AFの実験」



 草原の一ヶ所の草を刈り、シートを敷いてAFの転移装置の金属板をその上に置く。少し離れて、首からかけた転移装置のネックレスに意識を集め、先程置いた板に描かれた記号の様なものを頭の中でイメージしその場所に飛ぶと意識する。


 一瞬、目の前が歪んだと思ったらイメージした金属板から二メル離れた場所に立っていた。近くで見ていたミーちゃんも目が点状態。



「ペロもやりたいにゃ!」


「検証が済んだらね」



 何度か転移を繰り返し検証を重ねる。わかった事は、板の表に対して正面側に必ず転移する事、板を倒した状態だと正面に向かって下方向に転移し空中に投げ出される事は無いと言う事。


 次におこなったのは複数で転移してみる事。最初は俺とミーちゃん、次はペロも一緒と言う風に増やしてみたけど、セラ、ルーくん、ラルくん、スミレまで含めても問題なく転移できた。



「み~!」


「ニャンダフォー!」


「にゃ!?」


「がう!?」


「きゅ~?」



 スミレはぶるるって、不機嫌そうな仕草を見せる。転移装置が手に入ったといっても、スミレは俺達にとって必要だし、大切な仲間なのは変わらないよと言ってやると少し機嫌が良くなった。


 しかし、まさにAF中のAF。解錠のネックレス並にチートアイテムです。烈王さん、ありがとう~♪


 改修中の神猫商会支店敷地内にある馬屋に行き、大工さんにお願いして正面の柱に板が入るくらいのくぼみを作ってもらい、転移の板を入れて頑丈に蓋をしてもらう。これでいつでもここに来る事ができる。王都ベルーナの家とブロッケン山にも置けば完璧じゃないですか!


 転移装置のネックレスは無くすと不味いので、ミーちゃんに収納してもらう。



「み~」



 任せてよ~ってドヤ顔。可愛いからムニムニしてあげたら、ルーくんとラルくんもムニムニして~って寄ってきた。しょうがないね~。みんなまとめてムニムニしちゃうぞ!



 その日の夕食の後、みんなでミーティング。


 俺達はルミエール王国に帰る事を、ドラゴンの二人に伝える。



「まあ、仕方あるまい」


「そうですわ。ネロにもやる事があるのですから」


「烈王さんに貰った転移装置があるので、ブロッケン山に着いたら一度戻ってきます」



 どの位の距離が飛べるのかも調べないとね。王都ベルーナから公都ヴィルヘルムまで飛べるかわからないから。


 二人には支店が完成するまでは時間がかかるので、それまではこことは別の宿に移ってもらわないといけない。ここの宿は自腹じゃ無理です……。支店の方の居住スペースが出来上がり次第、そっちに移る事になる事も話しておく。屋台は支店の馬屋に置いておけば問題無いでしょう。


 仕事は五日働いて一日休みにする。二人は人族の勉強に来ているので、休みの日は自由にしてもらう。給料もちゃんと払います。今後の売り上げ次第にもなるけど、当面は屋台の売り上げの純利益の三分の一を払う事にした。クラウディアさんには、帳簿付けもお願いしてある。


 材料は当分俺とミーちゃんが担当する事になるね。こうなると、事務を専門にやってくれる人が必要になってくる。俺じゃあその手の知識がなさ過ぎるからね。何とかしないと……。


 明日は、大公様に挨拶して明後日ヴィルヘルムを発つ事にする。支配人さんにその旨を伝えると大変残念がり、明日の夜お別れ会を開いてくれる事になった。ありがたい事だけど、マジですか!



 翌朝、みんなと市場に向かい魚貝類を爆買いする。その後はバザーに行きこの地方の果物や野菜も買い込んだ。いまだにバザーを歩いていると黒真珠を買ってくれと真珠業者が寄ってくるので、今度店を出すからそこに卸すように言っておいた。


 黒真珠王ミーちゃんはこの黒真珠どうするつもりでしょう?



「みぃ……」



 ミーちゃん、もういらないよ~って顔してるけど、こうなってしまった以上何とかせねばなるまい。真珠の粉末って化粧品になったり健康食品にもなったような……黒真珠パウダー、売れるか?


 なんて事を考えながら王宮に来ています。



「神猫屋、繁盛してるようじゃな」


「大公様のお陰で街の人に覚えて頂きました」


「み~」


「なに、ちと顔を出しただけじゃよ」



 大公様の前には、餡子団子とみたらし団子の載った皿が置いてある。あれから毎日王宮の方が買いに来てくれている。


 大公様はみたらし団子を食べながら、熱いお茶を飲むのが好きらしい。今もペロと一緒に団子を頬張っている。ペロは食べるのよしなさい……。



「して、今日来た要件はなんじゃな」


「支店の方も目処がついたので、一度ベルーナに戻ろうと思います。烈王さんからの依頼もあるので」


「うむ、勇者の件じゃな。儂の方でも調べとるが厳重に情報封鎖しとるようじゃ。ハンターギルドの方も躍起になって調べとるようじゃが、これといった情報は無いようじゃな」



 何故、ハンターギルドが勇者の情報を欲しているのか。それは、勇者抹殺の為らしいです。闇落ちする可能性がある勇者なので、最悪ハンターギルドに闇勇者討伐依頼が来る事になる。ハンターギルドだけでなく闇ギルドにも依頼が行くらしいけどね。



「その前に会って説得できれば良いのですが……」


「みぃ……」


「ロタリンギアと言う国が絡む以上、これ以上は儂には手が出せん。済まんがネロ君に頑張ってもらうしか無いようじゃ……」


「しょうがないです。その為に選ばれたのでしょうから」


「アンネリーゼには文をしたため既に送っておる。できる限り、ネロ君に便宜を図るようにとな。烈王殿の依頼となれば、この国の依頼と同じ事じゃからな。表立って手助けできんのが口惜しいところじゃ」


「そのお気持ちだけで十分です。ありがとうございます」


「うむ。朗報を待っておる」



 勇者は同胞だから、できれば助けたいよね。



「み~」






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