143神猫 ミーちゃん、開店準備に大忙し。

 布屋さんで、パステル柄の布を買ったけど思った以上に高かったです。聞けばドレスなどに使う生地だそうです。


 ついでに、布に字や絵を描きたいと言ったら専用の塗料を勧められたので買いました。だって、専用って店員さんが言ってたから……騙されてないよね?



「み~?」



 ミーちゃんはこてんと首をかしげ、どうなんだろう~って顔をしてます。まあ、良いじゃないですか、こう言うのは気分の問題だしね。気持ち良く行こうよ。


 買い物も済み、宿に戻り支配人さんにお昼をお願いして部屋に戻ると、みんなはメイドさん達にブラッシングされてる最中だった。



「どうだったにゃ?」


「ちゃんと契約して来たよ。神猫商会壱号店だね」


「み~」


「おぉーにゃ」


「いつから入れるのかしら?」


「全て出来あがるまでには二ヶ月掛かるそうですが、居住スペースの改修は優先でおこなってもらうので一月位で住めるようになるそうです」


「それまでは、何もできないのか?」


「それも考えて、屋台の道具を買ってきました」


「「屋台?」」


「昼食後に説明しますよ」



 足元にラルくんが寄ってきたので抱っこしてモフってあげる。ブラッシングの後なので、艶々、フワフワで触り心地最高です。


 メイドさんの二人に裁縫ができるか聞いてみたら、片方が裁縫スキル持ちだったのでお手伝いを頼むと喜んで引き受けてくれた。俺もできない事はないけど、雑巾を縫う程度だから、上手な人にお願いするのがベストだと思う。


 昼食後、テーブルの上に紙を置いて全員でのミーティング。取り敢えず、屋台の絵を描いてアレックスさんとクラウディアさんに何をするかを説明する。



「私はフローズンとアイスキャンディーを作って売るのね」


「俺は餅を焼いて売るんだな」


「アイスキャンディーの大きさはどうするにゃ?」



 え、えぇーっと、忘れてました……。そうか、規格を同じにしないと駄目だよね。専用の型が必要になる、作ってもらうしかないかなぁ。


 メイドさん達にはのぼり旗と暖簾を作ってもらうことにする。絵と寸法を渡したらすぐ始めるそうで、自前の裁縫道具を持ってきて作業に入ってくれた。


 屋台は二日後に出来上がるので、その後みんなで色を塗る事を伝えた。



「楽しみにゃ」


「にゃ」


「がう」


「きゅ~」



 君達も色塗りたいのね……ちょっと不安。


 ペロの指摘通りアイスキャンディーを作る容器を作らないとないといけない。厨房に行き料理長さんから調理器具を扱っているお店を聞いたけど、ここの厨房にあるものは全てオーダーメイドだそうです。残念ながら料理長さんは知らなかったけど、他の料理人さんがお店を教えてくれたので行ってみる事にする。


 外は雨がやみ微かに日差しが出始めている。カッパは必要なさそうなのでミーちゃんを抱っこして、教えてもらったお店に向かった。


 お店の中は、調理器具で一杯。ミーちゃんも興味津々のようでキョロキョロ。


 計量カップにボールやヘラなど、実際に目の前で見ていると足りない物が多くある事に気付く。いろいろ集めるけど、アイスキャンディーの容器に丁度良い物が見つからない。こうなるとオーダーメイドしかなさそうだ。


 買い集めた調理器具をミーちゃんにしまってもらい、料理長さんに教えてもらったオーダーメイドの職人さんの所に来ている。


 職人さんに寸法を書いた紙を渡して素材は銅でお願いして、持ち手の棒を固定する仕組みも付けてもらった。これも二日後に出来るそうです。これで、粗方そろったと思う。それでも必要になった物はその都度集めて行こう。



「み~」



 宿の部屋に戻るとのぼり旗と暖簾が出来上がっていた。流石、裁縫スキル持ちの腕前、文句のつけようがありません。


 うちのメンバーは窓の前に並んで、屋根から落ちてくる雨だれに猫パンチ、ワンパンチ、ドラゴンパンチを放って遊んでいるようです。それって楽しい?


 さてと先ずは、暖簾をテーブルの上に広げて、暖簾に屋号を書きましょう。藍色の布なので、専用の塗料の白を選び拙い字ではありますが一気に書く。最後に一番端にミーちゃんの足形を模した絵を描いて四角で括る。なんちゃって判子です。



「神猫屋にゃ?」


「神猫商会の移動販売店だからね」



 次はのぼり旗、一つはアイスキャンディーと書き、デフォルメしたアイスキャンディーの絵を描く。もう一つにはお団子と書き、デフォルメしたお団子の絵を描いた。



「お餅じゃにゃいにゃ?」


「うーん、本当はお餅なんだけどね。形をお団子みたいにするから、お団子にした。本当のお団子もいつか作るよ」


「おぉー、楽しみにゃ」



 出来上がったのぼり旗と暖簾の出来栄えを見て屋台の光景を想像してみる。この世界の屋台やお店にはのぼり旗と暖簾と言った風習は無いから目立つ事間違いなし。


 アイスキャンディーもお餅も一度食べてもらえば、リピーターは必ず付く。最初の一手が大事になると思う。何か考えねばならぬ。


 それはさておき、メニューも考えないとね。明日はみんなでバザー巡りかな、アレックスさんとクラウディアさんに、餡子などの作り方を教えるのも忘れちゃ駄目だね。



「み~!」



 ミーちゃん……残念ながらミーちゃんのお菓子用じゃないからね。



「みぃ……」



 悲しそうな顔してるけど、ミーちゃんの餡子はまだまだあるから必要ないでしょう? それとも、隠れて食べてるとか……。



「み、み~♪」



 そんな事してないよ~ひゅ~ひゅ~って、どこでそんな事覚えたのよ。いや、ペロしかいないね……。ちょっと不安だよ。


 さあ、あと少しで開店準備も整う。残りも頑張りましょうかね。



「み~」




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